
その夜 杣は Sのアシスタントとして
夜のコンサートを終え 帰路にいた
途中で 「味の民芸」で 遅い晩飯をとることになった
杣は 背中に壁がある席につき
Sは テーブルの向かいの席につく
二人は その夜のコンサートを振り返って くつろいでいた
オーダーを取り終わり 料理を待っている時だったと思う
気がつくと 女が 杣達のテーブルの横に立っていて
メモらしきものを 杣の前に置いた
その女の存在は 誰の目にも 違和感を放っていた
180センチくらいの長身で 初老の 外国人の女性
頭には 深々と帽子をかぶり サングラスをしていた
女は メモを残すと 一言も発さずに 自分の席へ戻っていった
その席は 杣の正面 10メートルほど向こうにあった
そして その女のテーブルには 屈強な男が 3人座っていた
屈強な男達の 二人は 杣のテーブルに背を向けて座り
一人が 女の横に座っていた …そして全員 無口だった
奇怪に思われる 女の突然の行動にさえ 興味も反応も示さなかった
杣は 目の前に置かれた 店の紙に書かれた手紙を 手に取る
驚愕を隠せて無いだろう ひきつり笑いで Sに言う
「なんだか こんなモノ もらっちゃいましたね、、、ハハ」
ひととおり 目を通して その手紙を Sにも読んでもらう
『ナニ これ?』
「いや 分かりません、、、 なんかの勧誘でしょうか?」
(続く・・・)
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今日の補足
店内の各テーブルの間には ついたてが立っている
が 顔は十分に見える高さのモノ
杣は 女との間に テーブルがひとつだと記憶していたが
実際には ふたつあった
その間のテーブルに 他の客がいたかどうかは
残念ながら 記憶していない
ただ この距離では 普通の会話を 聞き取ることは出来ない
これを確かめる為に 十年ぶりに うどんを食いに行った・・・
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