06. 03. 16

朱紅文字の夜(完) スカーレットレター

060315_134901.jpg


J.Jと申します.

チェンバロのお話をされていましたけれど

唇を読む勉強をしましたのでゴメンナサイ.

私はプロのボンゴ奏者です DJもやります.

70才近い、サウジアラビア人ですが

貴女様は どこの店でチェンバロをひいてますか?

教えて下さいませ


J.J KHAN


私のボンゴも聞いて下さいませ

アメ車を売っている アルファーと云う店と(新高島平)

みちのく店一杯のみや 西台です。


*******************************
   今日の補足

・「奏者」の「奏」の字は間違っていたので ここには修正してある

・「貴女様」は 「あなた様」の意味と思えるが そのまま載せてある

・改行 下線 読点 句読点は 原文のママ載せてある

*******************************

| | Comments (12)

06. 03. 15

朱紅文字の夜④ ヒタイの印

そんな シュールなやりとりを もう少ししてから
女は 自分の席へ 帰っていった 
女の周りの 屈強な男達は 相変わらず 微動だにしない


当然 杣とSの不信感は 絶頂に達している
恐らく そんな会話を こそこそ していたのだろう
そこに 女が みたび やってきたのである!!!


その時の会話の記憶は 残念ながら もっと薄い
単語にインパクトがありすぎて 内容の詳細が覚えられなかった
とにかく 下記のような内容を 話してくれた・・・


『自分は 幼い頃から スパイの教育を受けた
だから 幾つかの外国語と 唇が読める

マザーテレサに 育てられたか 救われたかして
その弟子だか 認められた者だかである

更に サイババにも関係があって
その弟子だか 認められた者だかである

だから 世界に3人しかいない ヒタイに印を受けた者だ
それを あなたに見せよう』


そう言うと 彼女は 深々とかぶった帽子をとって
オデコにある 十字架のような 菱形のような
火傷が治ったような 傷跡のような 不思議な印を見せてくれた


『これで 信用してもらえたか あなたのオーラは 素晴らしい
あなたと話がしたいから 是非 店に来て欲しい』


女は 席に戻って しばらくして 男達と一緒に 無言で店を出て行った


・・・・・・・・

さて 現場での出来事は これで全てである 
現在残された 唯一のてがかり というか 証拠は
彼女の書いた 手紙のみである


個人的(?)な手紙を このようなトコロで 公開してよいか否か
これを 連日書きながら 迷っていたが 
やはり 諸君に見てもらおうと決意した (長くなったので 明日・・・)


| | Comments (2)

06. 03. 14

朱紅文字の夜③ 2ndコンタクト

060314_122101.jpg


すると 女は立ち上がり 再び 杣達のテーブルに来た
そして ナント 流暢な日本語で 話しかけてきたのである!
背を向けていたSも 今度ばかりは 驚いたようだった


当時の会話を 一字一句 記憶している訳では無いが
確実に発言された 言葉をつないでみる
内容的に 偽りは無い会話と思っていただきたい


『私は 怪しいものでは ありません』

「あ でも 誤解でして 自分はチェンバリストでは無いんです
 あの こちらは チェンバロを製作している方でして・・・
 自分は ただの調律師ですので・・・」


杣は 女の好奇の対象を Sに向けようと思った
実際 自分は演奏家では無いし
音楽に興味があるのなら 製作家の方が面白いはずだ!


しかし 女はSに目もくれず 杣に向かって言った
『私は あなたと話がしたいのです
 あなたのオーラが 素晴らしいのです』


は? オーラ?


杣は オーラに関しては 存在しているものと思っている
ただ それは 体臭のように いつだって 誰もが発していて
その人の状態により 放つ強さや 種類が変わったりするだけのもの・・・


チェンバロ⇒音楽⇒自分のボンゴ演奏
それで 興味を抱いたのだと理解途上にあった 杣にとっては
この発言は 奇襲も奇襲 ・・・普通 オーラごときで 接触するか?


とはいえ 天下の小心者な 杣青年
長身のサングラスの外人女性⇒赤い手紙⇒オーラ云々
誰だって こんな状況に会えば バベル(混乱)の極みに落ちるだろう


(なんと・・ まだ・・・ 続くのだ・・・)


******************************
   今日の補足


当時 杣は アストラインという 調律師の勉強会のメンバーで
次回の講座のテキストを 何ヶ月もかかって 書き上げたとこだった
確かに もの凄い充実感と 満ち足りた気分だったことは覚えている


更に ちょうどその頃 インドにはまっていて
「理性のゆらぎ」やら「アガスティアの葉」に傾倒し
CDから料理 更にはスピリチュアルへの関心も高かった


しかし オーラとは全く関係無い

******************************


| | Comments (2)

06. 03. 13

朱紅文字の夜② 手紙

手渡された 手紙の概略は 次のようなものだった


自分は70才近い サウジアラビア人で ボンゴ奏者であること
唇を読む勉強をしていたので 杣達の会話が分かったこと
自分が演奏している店(2件)に 聞きに来て欲しいこと


そして チェンバロの話をしていたので
どうやら 杣がチェンバリストだと 勘違いしたらしいことも分かった
実名かどうか分からないが 彼女の名前も書いてあった


ここで 幾つか 不思議なことがある
漢字が少し間違っているものの 達筆な日本語なのだ!
アラビア人が 何故 日本語の会話を それも唇で理解できるのか?


杣とSは 「これは怪しい! どう考えてもおかしい!」
ということになり シカトすることにした
声を落として そんな相談を コソコソとしていた


しかし 杣の視野には 彼女がこちらを見ている様子が 入っている
Sは背を向けているから良いが 杣は 彼女の正面にいる
彼女はサングラスをかけて こちらを凝視している


もうひとつ この手紙の奇怪性を 付け加えておく
書かれた文字が 赤いのだ!
日本人なら 赤い字で 手紙は 書かないだろう、、、


もし 純粋に 自分のボンゴ演奏を 聴いてほしくて
たまたま 赤いボールペンしか持っていなくて
この手紙を 書いたと そう肯定的に考えても・・・


諸君なら どうする?
自分なら 手紙より まず話しかけるだろう!
そんなふうに 混乱していく杣を サングラスは見逃さなかった・・・


(続く・・・)

| | Comments (2)

06. 03. 12

朱紅文字の夜① 1stコンタクト

060312_120001.jpg


その夜 杣は Sのアシスタントとして
夜のコンサートを終え 帰路にいた
途中で 「味の民芸」で 遅い晩飯をとることになった


杣は 背中に壁がある席につき 
Sは テーブルの向かいの席につく
二人は その夜のコンサートを振り返って くつろいでいた


オーダーを取り終わり 料理を待っている時だったと思う
気がつくと 女が 杣達のテーブルの横に立っていて
メモらしきものを 杣の前に置いた 


その女の存在は 誰の目にも 違和感を放っていた
180センチくらいの長身で 初老の 外国人の女性
頭には 深々と帽子をかぶり サングラスをしていた


女は メモを残すと 一言も発さずに 自分の席へ戻っていった
その席は 杣の正面 10メートルほど向こうにあった
そして その女のテーブルには 屈強な男が 3人座っていた


屈強な男達の 二人は 杣のテーブルに背を向けて座り
一人が 女の横に座っていた …そして全員 無口だった
奇怪に思われる 女の突然の行動にさえ 興味も反応も示さなかった


杣は 目の前に置かれた 店の紙に書かれた手紙を 手に取る
驚愕を隠せて無いだろう ひきつり笑いで Sに言う
「なんだか こんなモノ もらっちゃいましたね、、、ハハ」


ひととおり 目を通して その手紙を Sにも読んでもらう
『ナニ これ?』 
「いや 分かりません、、、 なんかの勧誘でしょうか?」

(続く・・・)


***************************
   今日の補足

 店内の各テーブルの間には ついたてが立っている
 が 顔は十分に見える高さのモノ

 杣は 女との間に テーブルがひとつだと記憶していたが
 実際には ふたつあった 

 その間のテーブルに 他の客がいたかどうかは
 残念ながら 記憶していない

 ただ この距離では 普通の会話を 聞き取ることは出来ない
 これを確かめる為に 十年ぶりに うどんを食いに行った・・・

***************************

| | Comments (0)

06. 03. 11

朱紅文字の夜(序) 十年ぶりの現場

060311_151001.jpg


その夜について 書いてみたい
うまく伝えることが出来るのか 自信は無い
連載形式にするが 何回になるかも まだ分からない


それは 1996年の ある夜の 僅か30分くらいの出来事
記憶では ずっと 8月だと思っていたが
当時の記録を調べてみると どうやら12月3日らしい

登場人物は 杣と チェンバロ製作家のS
そして 屈強な男3人と 女 である
断っておくが この話にオチは無い  あるのは謎だけ


当時の記憶の輪郭を もう少し鮮明にしようと
10年ぶりに 現場に行ってみた
高島平にある 「味の民芸」という店

実際に現場に行ってみると チグハグだった記憶が
少し 修正されてきたのだが
それだけに 女の目的が 余計に分からなくなる


女から渡された手紙に記述してある ふたつの店も 探してみた
駅前の交番や 警察署 地元の同業者にも 聞いてみたが
十年たったからなのか それとも嘘だったのか 存在していなかった

もっとも その店が存在していたとして その女に会えたとして
何を どう聞いて良いかなんて どうせ分からないから 
残念だったというより 正直 安堵している


前置きが 長くなったが
十年経った今でも その夜を思い出すと 頭と心が混乱するくらい
ただ ただ シュールなだけの話である・・・(続く)

| | Comments (2)