2008.08.20

夏の陣への滑走路 ⑤

「構造と調整」というクラスでは
ジャック模型を 作ってもらおうと
キットを製作してみました


Img_1866


ジャックの基本的構造さえ 理解してしまえば
形の異なる ジャックに出会っても
メンテは可能なはず・・・


実物と比べてみると
ちょっと 大きめです


Img_1879


しかし キットとはいえ
60個も作るとなると
結構 キツいっすね


ま パソコンに比べれば
慣れている木工ですし
なんとか なりましたわ


Img_1877


今回は 本当に短い滑走路でしたし
パソコンで データがぶっ飛んだ時には 
もはや これまで と 諦めかけたものです


しかし たくさんの人の協力への感謝と
少しでも チェンバロに興味を持ってもらうために
あとは 夏の陣で 戦うのみです


このブログが 更新される頃には
羽田の滑走路から 飛び立ってることでしょう
・・・どうなることやら


Kitt1


Kitt2


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2008.08.19

夏の陣への滑走路 ④

古典調律の紹介に かかせないのが 5度圏図
今回は 一目で 音律の特徴を理解できるよう
新しい 5度圏図を考案してみた


がしかし


その基本となる 円のグラフが パソコンで描けない・・・
なもんで チハヤにメールをして 泣きついてみたら
仕事の合間に 数種類の 素晴らしいグラフを 送ってくださいました!


まるで 異業種ながら そのグラフのサンプルは
線の太さや種類を含めて こちらの 願ったりカナったり状態で
感謝と共に そのセンスの高さと 対応の速さに 驚いたものであります!


Img_1839


で このグラフに 音名を 貼っつけて
たくさんコピーして それぞれの音律に従って
グラフのデコボコを 書き入れていきます


えー グラフの元は 美しいのですが
この後の作業は パソコンで 円も描けないオレですから
もちろん セコセコと 手作業になります・・・ ハハハ


製図用の 極細ペンで ジグザグを書き込み
その中を シャープペンで 塗りつぶす・・・


905223217_67


なんとも アナログな作業でありますが
久しぶりに 計算機と格闘しながら
いろいろと 勉強になりました


それぞれの音律を もう一度 音程比から 計算して
こうしたグラフを作るという作業は
あらためて その音律を 詳しく理解する キッカケになります


「最近の学生は 楽譜を 簡単にコピーできるから
 音楽の構造を 理解できずにいる
 私の時代は 全部 写譜してたから 作曲家と同じ作業によって
 曲の構造が よく理解できたものです」


かように 嘆いておられた 鍋島先生の言葉が
ふと 頭をよぎったものであります


Img_1842


思えば 昔から 音律早見表を 考案してたもの
20年前は ワープロもなかったので 
グラフの枠から手書きだったんだよね


Img_1840


今思うと パソコンより ワープロ時代の方が
図とか ルートなどの計算式を 簡単に書けてたんだよね
上のグラフは 長和音 短和音 どちらも 表示してたんだっけ


Img_1844


で 今回の 新しい5度圏図


外側の円が 5度の純正線 
内側の円が 長3度の純正線


純正より 狭い音程は 円の中心に向かって 凹み
純正より 広い音程は 円の外側に向かって 膨らみます
モチーフは サッカーボールなんだけど・・・


51


52


53


54


一番下のページの 右下にあるのが 
現代 ピアノに使われている 平均律
全ての調で 5度も 3度も 同じ凹凸 つまり 同じ響き


でも それまでは 調性が変わると
5度や 3度の デコボコも変化して
様々な響きに 変化してたんだよ


そんなコトだけでも ちゃんと 伝えられたら いいな

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2008.08.18

夏の陣への滑走路 ③

7日に 各種 調律法を録音したんだけれど
これが ようやく カタチになりつつある
アハハ 嬉しいじょ!


さて このミッションには たくさんの協力者の下に 
無事 遂行できていることを 
感謝と共に 報告しなければならない


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


まずは 音律に関する 詳しい資料を 
快く 貸して下さったのは 梅岡親分
忙しい中 時間を割いて 様々な資料と 楽器を見せていただきました!


そして MDから CDへの変換作業は
クラリネット奏者であり 録音でも大忙しの大友舎の主人 オートモ
150近いトラックを 95まで減らしたものの 
それを 手作業でなさって下さったとか・・・


大友舎では コンサートの録音を
なんと 破格の3万円から 請け負ってくださるとのこと!
ミクシーの日記でも 各演奏者からの厚い信頼が 伺えます!


Img_1837


あ そうだ 
パソコン 壊れてから ソマって漢字が出ないから
しばらく 主語は 「オレ」になります


そんでもって このマスターCDを
50枚以上 パソコンでダビングしてくれたのが
平成のクレオパトラッシュ ん? 妖気妃 ん? 後輩のうらら


オレが マンマと下田あたりに トンズラしてる頃
後輩は せっせと ダビングに 勤しんでくれたのであります
まだ ラーメンさえ 奢っておりませんが・・・


今回は ダビングのソフトを オートモのアドヴァイスに従って
いろいろ インターネットで検索して ダウンロードしてくれたらしく
オレが 金目鯛の煮付けに 舌鼓を打ってる頃 後輩は ベソをかいてたそうです


Cd1


Cd2


いやー みなさま 本当に感謝であります!
この感謝を エネルギーに変えて
夏の陣で がんばってきますです!


さて 感謝は 明日も続きます


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2008.08.07

夏の陣への滑走路 ②

夏のセミナーでは テキストの他に
それぞれの講座に ひとつずつ 教材を用意することにした
「調律の理論と実践」には 音律の唸りと 調性によって変化する響きを収めたCD


今日は その収録に行った


純正律
ミーントーン
ヴェルクマイスター
キルンベルガー
ヤング
1/7
リーマン・バッハ


まずは それぞれの音律の 割り振りの唸りを録音する


それから C-dur A-dur Fis-dur Es-dur で 七つの和音のカデンツを弾く
 1-4-5-1-3-6-2-3(#)-6
つまるところ 登場する 全ての長和音と 短和音を 確認することができる


さらに C-dur と Fis-dur で 同じメロディーを弾く


カデンツと メロディーの演奏は 後輩のウララ
本当は 12全てのカデンツを録音したかったが 時間が あまりにも足りなかった
楽器の搬入搬出 及び 演奏を ラーメン1杯で引き受けてくれた後輩に 感謝である


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さて このような音源を準備するのには 理由がある


遥か昔 まだ調律学校の学生だった頃
杣は 古典調律に すでに興味を抱いていた
そして 「0ビートの再発見」の技法編を見ながら せっせと調律を試みた


しかし 調律が終わって 弾いてみても
それが 数値通りの つまり 理論通りの音律になっているのか
まったくもって 自信が無く 不安な思いをしたものだった


なもんで 古典調律に 少しでも近道してもらうために
とりあえず 代表的な音律を 音で確認できるものを 準備したかった


テキストの方には 新しい音律早見表を作成し
更に多くの音律を紹介する予定である
それには 調律手順と 唸りの表も添える予定である


Img_1634


しかし 1日 ほとんどの時間を 調律ばかりするというのは
いかに調律馬鹿であっても しんどいものである


最後に レジスターの それぞれの音を紹介する音源を録音した
B8’ F8’ 4’ B8’+F8’ B8’+4’ B8’+F8’+4’ バフ
この7種類の音源の曲は 杣の曲を 杣自身が演奏した


退館時間が迫っていたこともあったが
調律はメロメロ 演奏はボロボロ・・・


後輩は 笑いをこらえながら 最後まで付き合ってくれた
しかしながら 空きっ腹には 勝てなかったらしく
録音されたノイズは全て 後輩の腹の虫が 鳴いているものである


ギュルギュル ギュルギュル ギュー ルルル・・・ 
腹の虫の泣き声は 古典もモダンも 関係ないようだった

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2008.08.02

KO牧場の決闘

えーと 突っ込みドコロ 満載であります



奥の人形が やたら気になるのは 杣だけでは ないでしょう
割り振りを パップスでするとは さすがに 3千年の歴史であります!
そして 誰もが サウスポーの調律師だと 信じたことでしょう!


では 三角巾 じゃなかった 三角琴 つまり グランドの調律をどうぞ!



フタ閉めたまま 調律できること 初めて知りました
不思議な 検査音程が オリエンタルであります!
そして どうやら 右ききのようであります・・・


つーか 最後のセリフ 「OK!」
決闘する 牧場の名前でしょうか・・・ 
ナニが OKだったのでしょうか・・・


完全に KOされました!

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2008.07.25

夏の陣への滑走路 ①

どこまで 出来るのか 分からない
しかし 正式なオファーが来た時点で 
すでに ひと月を切った タイミングだった


あまりに 短すぎる 滑走路である


楽することは 幾らでも 出来る
適当に 資料を提示し 高いところから解説する
しかし それでは チェンバロへの好奇心を引き出すことは 出来ない


チェンバロに関する レクチャーである
対象は 調律師
夏の陣


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これから テキストやアイテムの 製作過程を追いながら 
準備の段階を 報告していこうと思う
それは同時に 自分自身への メモにもなる


オファーの段階で 曖昧なテーマを提示された
2回のレクチャー 1回が4時間


調律師といえども チェンバロを ほぼ知らない対象であり
ピアノの呪縛を 解放して まずは マッサラにする
そして チェンバロに関する 新たな情報を 提示する


何より 講義内容が 実践から 遠すぎてはいけないし
それでいて やわらかく 強いインパクトも必要で
なおかつ 家に帰ってからも 反芻してもらえるアイテムを提供しなければ


①古典調律の理論と実践
②チェンバロの構造と調整


杣は この二つのテーマを 先方に送った
とりあえず 現場に 2段鍵盤のチェンバロの準備も 依頼した
後は 全て こちらで準備しなければならない


杣も 最初は 全くのピアノ屋で
何故 チェンバロなんか 扱わなければいけないのか
甚だ遺憾で 憂慮していた 桐朋時代だった


ピアノ色の眼鏡をかけている限り
チェンバロの 面白さと 難しさは 見えてこない
自身の経験があるだけに この壁は 高い


しかし チェンバロを通して 新たに見えてくる ピアノの色があり
逆に ピアノを知っているコトにより チェンバロは より豊かな天然色にもなる
そうした感動へ 僅かでも漸近できる 角度というキッカケを 贈りたい


そんなワケで 工房の楽器製作は 完全停止
この夏の陣へ向けた アイテムの試作を開始した


幸いなコトに 神戸出身の大先輩や
浜松在住の大先輩方が 資料の提供や 取材などを 
快く承諾して下さり 後は どれだけやるか・・・ である


たぶん バテる

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2008.06.02

講習会-後世への最大遺物

国立 ムサシ楽器 ヴィオレホール


日本ピアノ調律師協会 関東支部 9班の研究会
ヤマハCFという フルコンのピアノに サウンドベルを
実際に取り付け その効果を 体験できるというもの


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スタインウェイでは グランドトレブルベル という名称らしいが
こいつが 高音部の 響板の裏 支柱に取り付けてあって
鉄骨にかかる力を 支柱に伝えているモノなんだが


通常は この部分は 木材の支柱が取り付けてあって
これが 金属だから スタインウェイの音は 素晴らしいのではないか!
などという 安易な憶測も かつては飛び交っていた


今回の研究会では この鋳物のサウンドベルを
中音の低い辺りに 1個
そして 高音の木材の支柱を 切断して 1個 取り付ける


・・・・・・・・・・・・・・・・・


で まずは ナニもしていない状態のピアノの音を確認しましょう
ということになって 数人の調律師が オモムロに音を出す


タン タン タン タン


調律師は どうして 音を確認するときに
1音1音 フォルテで弾くのか 甚だ疑問である
そんな音は ピアノの演奏では 出てこないではないか


仕方が無いので 杣は アドリブでG-durのアルペジオと 曲を弾く
ピアニッシモが コントロールしにくく ウーム ムムムな状態
立ち上がりも悪く 眠っているピアノという印象


まるでナルシストな音を出して 席に戻ると
日本のチベットと呼ばれている 甲府からやってきた みっちゃん(♂)が
ジャズを弾いてくれた! これは 非常にピアノの音がよく分かる


さて それでは まずは 中音のベルを取り付けてみましょうか


Img_9904


関東支部5班の アントニオ・ナトリが 実演をしてくだすった
(まるでプロレスラーのようなので 勝手にアントニオと命名)
まずは 鉄骨に 穴を開ける


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鉄骨からのボルトが 支柱まで伸びるため 次は響板に穴を開ける
ピアノの裏側での作業のため ゴーグルをつけて 果敢にドリリング!


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支柱に取り付く サウンドベルと
鉄骨からの ボルトは フタツのジョイントによって
位置の修正が出来るようになっている


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で 最後に 音を聞きながら 
サウンドベルと ボルトのネジを締めていくのだが
ハッキリ言って これは 明らかに 響きに変化をもたらした!


タン タン タン の音は いっさい無視して 再びミッチャンに弾いてもらう
音の輪郭が鮮明になり ピアニッシモのコントロールが容易になっている!
うーん これは たまげた!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


続いて 高音部の支柱を 1本 ぶったぎる


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切断してみて分かったが この木材は ブナだった・・・
いい材料 使ってやがるなー と同時に
アントニオの忍耐強い作業に 脱帽である


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もともとあった ボルトの位置の支柱を 完全に切断
これ 張力かかったままでやるんだよね・・・ 最初はビビったさ
でも このボルト外して 支柱切っても 調律は変化無し・・・ へえー すげー


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さて 高音部のベルも取り付けて・・・ サウンドチェック
正直な感想としては 高音部の方は 特に大きな変化は感じられない
ミッチャンのピアニッシモも 高音部取り付け前の方が 弾きやすそうだったし・・・


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ま 更に 駒圧測定やら いろいろ 盛りだくさんな講習会でした
イッペンに書くと 焦点がボケるので このくらいにしときませう
新たな発見も たくさんもらえて いい刺激になり 有意義な時間を過ごせました


実際に 作業に従事された アントニオ・ナトリ先輩
そして 企画から当日の運営まで 携わった 幹事やスタッフの方々
本当に お疲れさまでした! 感謝です!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


さて この 後付けサウンドベルの考案者は 濱田光久
調律師協会では 知らぬ者は おらぬ程 
アクティブで アグレッシブに ピアノの可能性を追求してる方でございました


ございました という過去形を使用しなければならないのが
とても 残念なのですが・・・


実は 今回の講習会も 彼本人が 講師を務める予定だったのですが
この講習会の3日前 杣の誕生日の5月30日に お亡くなりになられたのです


彼の考案された 独立アリコート初め 様々なアイデアは とても刺激的で
今回 お会いしたら たくさんの質問と ツッコミを ぶつけてみたかったのですが
それすら出来ない お別れになってしまいました


でも 調律師の大先輩が 遺して下さった そのベクトルは
我々 後輩達が 引き続き 受け継いでいくことによって
ピアノと 音楽に 貢献できる可能性を 広げていかなければと 改めて思いました


お会いできなくて 本当に残念でした
でも たくさんの宿題を遺してくださったこと 感謝しております
そして 心から 御冥福を お祈り致します
 

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2007.11.22

真相の陰と陽 ③

前略


僕は 明日も チェンバロの調律に行くんですよ
それが どこか 分かりますか?


先生が たくさんのチェンバリストを 世に送り出して
そして その愛弟子達が 今も 懸命に前進している
オリゴ エト プラクティカ  そう 古楽研究会のコンサートです


先生の住んでらっしゃった 要町から
少し 北東の方に 引越しして
ついに 最近 ホールを完成させて 明日が お披露目なんです


明日の 「オリゴの秋」の 出演者は
たぶん 先生のことは 御存知ない方々ばかりだと思いますが
でも こうやって 先生の開拓した土壌で 新しい実りが 繰り返されています!


そして この新しいホールは 一般にも開放されているので
コンサートや リハーサルなどの練習を通して
多くのチェンバロや 古楽の愛好家の活動に 貢献していくことでしょう!


先生が 愛着をもって 育ててこられた 
ヨーロッパの匂いが漂う 数々のチェンバロも
今でも 音楽のために 活躍しておりますよ!


Img_6485


僕は 今でも 調律が 思うようにいかなくて
でも だから とても面白くて
それを 生業にできていることを 幸せに感じてます


そして こうして チェンバロという楽器の ハードとソフト
これが この国で 充実しているということ
ともすると ついつい 当たり前のことのように 錯覚してしまいます


でも 先生の世代のパイオニアが いらっしゃらなければ
こうした活動は まだまだ 特殊なものだったでしょうし
多くの 若い優秀な才能も 開花することは なかったと思います


感謝と共に これからも 忘れないようにしていきたいと思っています


若い仲間に 先生の話をする時
ついつい 先生の悪口ばかり 面白おかしく 話しちゃうんです
でも 僕の本音は ちゃんと伝わるように 手加減してるつもりです


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


8年前の今日 11月22日
僕は あの夏と同じ 作務衣を着て
雪駄を履いて 代々木のムジカーザで調律をしていました


雪駄の鼻緒が切れて しばらくして
加久間さんから携帯に 電話がきました
それは 先生の訃報でした


今 先生の 最後のリサイタルを 聞いてます (調律が ひどいです・・・)


先生の開拓された この世界が 更に充実していきますように
そして あらためて 先生の御冥福を お祈り致します


長くなりました

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2007.11.21

真相の陰と陽 ②

前略


フランクフルトの空港の テレビに映っていたのは
20世紀最後の日食に湧く ドイツ人の姿でした
僕たちは そこで1泊して ライプツッヒに飛び立ちました


僕の手元には 1冊の手帳が まだ残ってます
先生と行った ドイツでの日々を 鮮明に記した手帳です


先生は 僕が日記をつけていると知って 
「いつか 役に立つ日が来ることでしょう」と おっしゃりました
でも 残念ながら 僕には まだ その力は無いようです


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


先生が ミュールハウゼンという ドイツの真ん中の街で
リサイタルがあるので 一緒に行って欲しいと おっしゃったのは
御茶ノ水にある病院でした


病室が 415と聞いていたので 開口一番に
「先生の病室は バロックピッチなんですね」などと
つとめて 陽気に振舞おうとしていた僕は 先生の冷笑で すぐに萎えたものです


8月に ドイツで リサイタルがある
でも 医者からは 誰か 付き添いがいなければ 許可がおりない
だから 一緒に 最後のリサイタルに 行って欲しい


数日後 僕は 「一緒に行きます」 と返事をしました
すぐに返事が出来なかったのは 同行することの不安が 大きかったからです
でも それ以上に 悔しさへのリベンジが 大きかったのです


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コンサートの途中 突然 譜面が落ちてきて
それを 拾い上げたのは 近くに座っていた 外国人のジェントルマンで
その後 2段鍵盤の 上鍵盤のひとつが 戻らなくなって・・・


あろうことか コンサート中断
調律師のくせに 譜面を拾うことも 出来なかったうえに
トラブルも 解消できずに あなたは一体 ナニをやっているのですか!


あれは 1999年の春の 東京でのコンサートでした


初めて 外に出して コンサートに使う楽器
そして 初めて モダンピッチにして使う楽器
リハーサルは 何故か 何もトラブルは 無かったんです


雨が 降ってました
会場の湿度も 上がって
一連の事故が起きて 僕にとって 悔しいコンサートでした


思えば あれが 先生の 国内最後のコンサートになってしまいました
本当に 御迷惑おかけして すいませんでした
でも あの時は あれが精一杯でした


それから ヒトツキくらいしてからでしょうか
僕は 電話で その事態を知りました
先生が 癌に犯されていることが発覚したということ


あと 半年ほどの 余命であること


Last


1999年の夏といえば ノストラダムスとか グランドクロスとか
この世の終わりが来ると 少年時代から 密かにビビッていました
でも 現実の99年の夏 僕は先生と ドイツにいました


そういうわけで 先生 ごめんなさい
僕は 先生の最後のリサイタルへの同行というより
春のコンサートの リベンジで ドイツ行きを決めたのです


あの時は まだ 先生が亡くなられることなど 実感が無く
ただ 調律師として もう一度 先生のコンサートで
今度こそ きっちり 仕事をしたい と そんなエゴだったのです


あの夏の 2週間の日々は 僕の日記を 読み直す限り
それぞれの そうした ベクトルの相違が 軋轢の要因になっていて
僕は 冷酷な人間でした


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


先生の 最後のリサイタルは 
その後 古楽研究会の 愛弟子達によって CDになりました


実は 僕は あのCDを 1度しか聞いてません
それも じっくりでなく 録音状態を確認する程度の認識で
さらっと 聞き流した程度です


僕は あの夜 現場で先生の演奏を聴いてました
そして それが どのようなものだったか 鮮明に記憶しています
だから 録音が 少し 怖かったんです


でも 明日 8年ぶりに あのCDを聞きたいと思います


長くなりました

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2007.11.20

真相の陰と陽 ①

前略 


この季節になると いつも 先生のことを 思い出してます
最後に 病室に クラヴィコードの調律に行ったのは
いつだったのか・・・ 正確に思い出せないのも 悔しいです


僕は 相変わらず 自分に興味のあることだけ 夢中になって
バランスが悪いまま 生きております
先生に 何度か 叱責されたことがあるのですが 相変わらずです


最近 調律の仲間も 演奏家でも 
先生に お会いしたことが無い という若い世代が 活躍してきて
そうした時代の移ろいが 頼もしくもあり 淋しくもあり


でも 自分も含めて この極東の小さな島国で
ささやかながら チェンバロという楽器に 携わっていられるのも
間違いなく 先生のおかげだと 信じて 感謝しています


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


先生と お会いする 少し前
僕は 浜松でピアノを造ってました
そして 東京に戻ってきて 桐朋音大の調律事務室に 入社しました


でも 東京に戻った翌日に 僕が行かされたのは 桐朋ではなく
東松山にある 堀洋琴工房でした
1週間くらい 泊まりこみで 再び 木の匂いに包まれていました


最初は 何故 自分が チェンバロ工房に研修に行かされたのか 
全く理解しておらず 堀栄蔵氏に さんざん罵倒されておりました
それが 僕とチェンバロの 出会いだったのです


どうやら 桐朋音大に 堀さんのチェンバロがあって
ピアノと共に 古楽器のメンテもしなければならないと
ようやく 状況を把握したのは 研修が終わる頃でした


そして 桐朋に行き始めると 更なるパニックが待っていました


まだ チェンバロの調律と ヴォイシング程度しか 分からない僕に
古楽器科の先生方が 次々と 異なった注文をしてきたのです


先生は月曜日にいらしていて 「もっと ツメを硬くするように」と おっしゃり
慌てて 隙間の時間をぬって ヴォイシングをしなおすと
水曜には 別の講師が 「もっと ツメをやわらかくしてください」と おっしゃり・・・


最初の頃は 毎週 その度に パニックになりながら 調整をして
ピアノの調律師なのに なんでチェンバロなんか やらなきゃいけないんだ!
などと キレながら すっかり チェンバロが大嫌いになってしまいました


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


先生が 1974年に創設された オリゴ エト プラクティカの
「オリゴの春」に 招待していただいたのは 
それから 1年くらいしてからのことだったと思います


その頃には 講師達のCDを 聞いて
ただの みすぼらしい 木の横笛だと思っていたのが
凄い表現力を持っていて 古楽器にも 真剣に向かい始めていた頃です


やがて 先生の自宅の楽器を 調整させていただく機会が与えられ
オリゴのコンサートや 先生の「衝撃と安息のスペース」など
拙い技術ながら たくさんの経験を させていただけました


Lstnbsm


1997年の4月に スコヴロネックを使った 先生のリサイタル
あれは 本当に 忘れられないコンサートでした
演奏に感動したのも その後の事故も 忘れることができません


当日の早朝 2m60くらいある 大きな楽器を搬出したのは ピアノ運送屋でした
僕は その様子を 見届けるという役を 仰せつかり
細いマンションの階段を 3階から 降ろしていくのを 見守っていました


そして コンサート終了後 感動に酔いしれて 先生のマンションに行き
楽器が 無事に 先生の部屋へ戻すのを見届ける予定でした
でも マンションの入り口には 運送屋のトラックが ひっそりと停まっていたのです


どうやら 朝 搬出する際に 階段の電気を外した 運送屋さんが
あやまって 電気をショートさせたらしく マンション中が停電になってしまい
帰ってきた楽器を 搬入させないよう マンションの住人が激昂していたのです


打ち上げを終えて 帰ってこられた先生は 驚愕されて・・・ 
先生と 先生の秘書と 僕の三人は 対策を打ち合わせましたよね
たしか 朝4時頃に タクシーで帰宅したことを覚えております


数日後 秘書の方から 事態の経過を伺いました
先生と運送屋が 一軒一軒 回って 謝罪されていたそうですね
なにより 楽器が無事に 戻って 僕も安堵したものです


でも 「調律師の不手際で 停電になってしまった」と 謝罪していた
ということを聞いて 愕然としたものです
あの後 あの階段で 住人に遭うのが どれほど辛かったものか・・・


長くなりました 


明日は あの夏の思い出を 回想してみたいと思います


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2007.09.04

狂おしく美しく ③

ソウルで 日本人のフォルテピアノと 
韓国のヴァイオリニストが
コンサートをやった時のことだ


ピアノと ヴァイオリンの 音量のバランスがとれなかった


ピアノの音が 大きすぎるので
短い突上げ棒で フタを小さく 開けてみたが 響きが美しくなく
結局 フタを 外してしまった


が 今度は 音が散り過ぎて ピアノの音量が 小さくなってしまう

で 試しに 調律を変えてみた


オクターブを かなり広めにし ユニゾンを かなり膨らませる
そして これだけなのだが 響きのバランスが 見事に整った


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


現代のピアノは 弦の特性と 平均律という音律によって
オクターブを広げることによって より美しく響く


しかし チェンバロや フォルテピアノでは
このデフォルメされた調律は 美しくならない


なもんで フォルテピアノへの この調律変更の作戦は
結構 勇気がいる
が ホールの響きなどを考慮した時 なんとかなる と想定できた


ハッキリ言えば このデフォルメ調律は 狂わせているのだ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


重ねた年月に 比例して 技術が向上すればいいのだけれど
なかなか どうして 今でも 大失態を曝している
悔しくて 恥ずかしくて だからこそ この仕事は 楽しい


武久源造の言葉を 拝借すると
演奏という動詞は 英語では 「PLAY」
スポーツや ゲームと同じ 動詞


プレイ というと 「楽しむ」 というイメージが強いが
その楽しさには 愉快さだけでなく 苦しみも 辛さも含まれている
だからこそ 楽しめる領域がある


多くの調律屋にとって 調律するという動詞は 「TUNE」ではなく
プレイ チューニング だと思う
それぞれ 悪戦苦闘して そうやって 音楽へ貢献しようと努めている


いつの日か 演奏中に狂ってきても
美しい響きの調律が できるようになりたい
そのためにも キッチリ 調律していきたい


さ 明日も がんばりますか


(完)


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2007.09.03

狂おしく美しく ②

調律師の 研修会で こんな場面を経験したことがある


2台のピアノが 準備されており
1台は 地元の有志が 前日から調律してあり
もう1台は その日の講師が 本番前に 慌しく 調律させられる


同業者に さらされながら 調律をするというのは
別に ナニが違う訳でもなく ナニか特別なことをするのでも無いけれど
いつもと違う 不思議な緊張感に包まれる


その講師も 汗をかきかき 短い時間の中で
ざざーっと 調律を終わらせ コンサートが始まった


ピアニスト というよりは フォルティストと呼びたくなる 演奏者は
ちょっと 下品なタッチで 自分の音楽をピアノに要求している
ピアノの音を出すのでなく 自分の音を 無理やり 叩き出そうと奮闘する


しばらくすると 可哀想な 2台のピアノは
調律が ヘロヘロとしてきて やがて ウワンウワンになる


そして その時 二人の調律師の違いが 如実に現れた
地元の有志が 調律したピアノは ただ 狂っていき
講師の調律したピアノは 狂ってなお 美しいのである


もっと 正確に表現するなら 調律したての時より
美しく感じてしまう 響きに 変化していて
これが 実に音楽的で 目から でなく 耳からウロコが ポロリ


(続く) 

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2007.09.02

狂おしく美しく ①

初めて 調律するピアノ
それは メーカーでも 機種でもなく
ただ 初めて出会うピアノ


遠方から 引っ越してきて 依頼されるピアノだったり
長年 調律をしていなくて 依頼されるピアノだったり
それまでの 調律師が 亡くなられて 依頼されるピアノだったり


初めてのピアノは たいてい 初めて会う お客さん
ぎこちない 緊張感を 短時間で暖めて
挨拶が終わったら ピアノと御対面


鍵盤蓋を開けて まず 音を出す
立ったまま ペダルや タッチのレスポンスも 確認する
最初に弾くのは たいてい Gの分散和音


時々 ごく稀に この狂った状態の ピアノの響きに感動することがある
ピアノという 楽器にではなく
最後にやった 調律師の 技術に感嘆する


天屋根を開けて パネルの内側にある
調律作業カードを取り出してみれば 知らない名前の技術者
最後に調律をやった日から これだけの時間が流れているのに・・・


いい仕事をしている 調律師の後を任されるのは
最初 こんな仕事 自分には出来ない と ややプレッシャーを感じて
でも やがて よっしゃ 頑張らせてもらいます と やや張り切る


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


世の中には たくさんの 調律師がいて
有名な人もいれば そうでない人もいて
でも こうして ひっそりと 黙々と 良い仕事を重ねている


調律が狂ってる時 調律師の もうひとつの技術が 露呈される
それは 狂っても 美しい響きがする
それは そのピアノと 十分な信頼関係を築けている証


(続く)

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2007.06.10

ついに! 本日! エセックス!

帰国して ようやく アジトに辿りついて
くたびれた杣のもとに 一通のメールが届いた


調律師であり 日本ピアノ調律師協会で 同じ班で お世話になっている
ジャッキー先輩からだ!
・・・また なんか やっちまったかな オレ ・・・怒られるのかな オレ


しかーし 内容を見て 狂喜乱舞! 疲労消滅! 
気分は 元気ハチュラチュ ボラギノールC!
あの エセックスに会えるチャンスが ついに ついに やってきたのだ!


*********************


まあ ピアノに興味ない人にとっては どうでも良いネタなんですがね


エセックスとは!
スタインウェイが設計して カワイが製造しているのが ボストン
スタインウェイが設計して 韓国のヨンチャンが製造しているのが エセックス


エセックスの噂を 初めて耳にしたのは たぶん 前世紀なんじゃないかな・・・
日本では 売られないとのことだったので
01年に ニューヨークのスタインウェイの ショールームに行っても 会えず・・・


なもんで 製造元の韓国に行けば 会えるかも!
てなコトで 04年 ソウルのピアノフェアに行ったのだが
ここでも 会えず・・・


で 遂に 先月のヨンチャンの工場見学で 間違いなく会える!
ハズだったのですが・・・ 製造中の楽器は見れたものの
音は 聞けずに スゴスゴと帰国してきたワケなんです・・・


そこに このジャッキー先輩からの 朗報!
レスラーのイメージがありましたが ネコと戯れて 肋骨を骨折してから
悟りを開かれたのでしょうか・・・ 間違いなく 今や 杣にとって 「神」であります!


ピアノプラザ群馬


てなワケで 本日 夕刻 ついに エセックスと 初対面!
いやー 楽器ってのは 百聞は一聴にしかず だからね!
自分で 音出してみたいわけよ どんな楽器でも!


さて この続きは この後に書くか
明日の記事になるのか
今はまだ 分かりませんが・・・  高崎へ 行ってまいります!


Img_2419
↑ここまで 工場で見てんのに 音 聞いてないんだぜ・・・ 

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2006.12.26

ブザマな調律

ピアノや チェンバロは
とても 調律しやすく 作られている


Hutuunocyouritu


しかし これが 足鍵盤となると・・・
普段 使わない筋肉を 総動員して
ブザマなカッコで 調律しなければいけない・・・


Tuning


あまりに 体のフシブシが
ツリそうになったので
最後は 諦めて 左手で調律せざるを得なかった・・・


Hidaritecyouritu


オマケに 弾いている途中に
メカニックのトラブルが 起きれば
更に 困難な体勢で 対処しなければ ならなくなる・・・


Cyousei


まあ それでも 調律できるだけ ありがたい


コンサートの休憩時間に 調律のチェックをしたくても
楽器が聴衆に占拠されてしまうと
右端の調律屋のように トホホな散歩を せざるを得ない・・・


Tohohonaore

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2006.12.19

響の断層⑥ 音律と調律

古典音律を扱った 書物の多くは
たいてい 平均律を 悪の枢軸 呼ばわりして
純正な音程を 美化するニュアンスが 含まれています


これには いろいろな意見があって 当然と思います
しかし 数学上の音律は 
実際の 現場の音楽では 別のモノになってしまいます


タルトタタンは リンゴを使いますが
同じレシピで 同じ調理法をしても
紅玉と ジョナゴールドでは 違うモノになってしまいます


肉じゃがでも 同様で
男爵を使うか メークイーンを使うかで 結果は異なり
どちらが オイシイか 見極めて使用されていると思います


・・・・・・・・・・・・・


音律というのは あくまで 設計図に過ぎません
実際には 「調律」という作業によって
音楽の中で 使用されていきます


ドイツでも アメリカでも
同じ図面で スタインウェイピアノは 作られていますが
両者は 全く別の個性をもっています


同じ楽譜を見て ゴールドベルク変奏曲を弾いても
グールドと 鈴木では 
全く違う 音楽が紡がれます


音律は こうした 楽譜と同じように
あくまでも 設計図でしかないのです


・・・・・・・・・・・・・


実際に 様々な楽器を 
いろいろな音律で 調律してみますと
既成の古典音律賛美論の 大きな欠落部分を 発見できます


それは 楽器の音色です


結論から 言ってしまえば
チェンバロには 平均律が 全く似合わないし
ピアノに 純正音程のある 古典音律は 似合わないのです


音律は 楽器の持っている可能性を
一番引き出すものが 選択されるとき
最も 自然体で 美しく 鳴ってくれます


・・・・・・・・・・・・・・


もうひとつ 


実際の調律において
チェンバロ オルガン ピアノでは
オクターブの幅が 異なってます


現代のピアノですら 
家庭用の 背の低い アップライトと
コンサート用のグランドでは 平均律の うなりからして 異なってます


そして 同じピアノであっても
調律屋が 異なれば
調律の結果は 異なってしまうものなのです


・・・・・・・・・・・・


更に もうひとつ


アメリカ人に 日本の代表的な料理を 聞くと
スシ だの テンプラ だの スキヤキ
と 答えるかも知れません


しかし 実際 我々が 毎日の食卓で口にしているのは
納豆やら 味噌汁やら 漬物 そして ゴハン であって
日本でありながら パスタも ラーメンも 食べています


そう 代表的な イメージと
日々の カジュアルなものとでは
少なからず ギャップがあるものです


18世紀の 西洋音楽というと
コンサートで聴ける 教会音楽や 宮廷音楽だけでなく
庶民の 楽譜に残っていない 無数の音楽が あったのです


同じコトが 音律にも あてはまり
現在 残されている 名前のついた音律だけでなく
カジュアルな 無名の音律の上で 音楽が響いていたと思われます


そして そうした カジュアルな音律は
昔の調律の手順や 傾向を 実際に調律していく時
おぼろげながら 見えてくるような気がしています


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


一般的には 純正の ウナラない音程は 「キレイ」で
ウナる音程は 「キタナイ」と 語られています
そうすると ビブラートは 汚いのでしょうか?


鍵盤楽器は 音の自由を 剥奪することによって
逆に ウナリ という 新しい個性を 手に入れたように思います


その ウナリを 排除するだけの考え方でなく
逆に そのペナルティを 生かすことが
調律屋の 大きな課題であり 可能性の領域だと思えてなりません


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


なーんて 熱く語っちゃうと
自分の仕事に 余計なプレッシャーを かけちゃうので
まあ こんなトコに しておきましょう!


調律って 楽器のために
そして 最後は 音楽のために あるので
その為に これからも精進して参りまする!


で ちょっと長すぎる 連載の最後に
古典音律を 耳で試したい人のために
音符で 調律できるようにした表を 掲載しておきます!


・・・・・・・・・・・・・・・・・


ミーントーン
Minton


ヴェルクマイスター
Werk


キルンベルガー
Kirn


ヤング
Young

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2006.12.18

響の断層⑤ 遥かなる響き

5度圏図は 響きのイメージが 湧くようになるまで
少し時間がかかります
なので こんな図を 作ってみました


(↓ 右クリック⇒リンクを開く)
Ekoru


この図は ひとつひとつの 和音が
純正から どれくらいズレているかを
視覚的に 観察しやすくした(つもりの)ものです


アルファベットの 大文字は 長和音で
小文字は 短和音です


主音の右が 属音の和音で 左が 下属音の和音です
ですので 主音の前後ふたつを見ると
合計6個の 長短の全ての和音が 観察できます 


マスの中の 中央の 点線が
ウナラない 純正な位置だと思ってください


ですので 中央の点線から 離れるほど
ウナっている とイメージしてください


・・・・・・・・・・・・・・


ミーントーン

1523


この音律は ウナラない 3度が
8個もありますが
全くつかえない オンチな音も入っています


「wolf」と書かれた 右下の5度は
一人で ボンテギを 36匹も 抱えています!


この 36匹の音程を オルガンで弾くと
「ヴォルルルル!」 と 狼の遠吠えのように 聞こえるので
「ウルフ」と言われています


そして この音律は
シャープと フラットが しっかり分かれてしまいます


今は ミのフラットと レのシャープは 
同じ鍵盤で ナンの違和感もありませんが
この音律では それが しっかり分かれてしまうのです


なので ミーントーンで 全ての調を弾くためには
こんな鍵盤が 必要になってしまいます

Chibikuro


↑は 1999年に 杣が作った 最初のチェンバロですが
1オクターブの中に 19もの鍵盤があります
ハッキリ言って 実用性は皆無です! トホホなデビュー作でした・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ヴェルクマイスターⅢ

1691


キルンベルガーⅢ

1780


ヤングⅡ

1800


このあたりが 「古典調律」と名づけられて
比較的 ポピュラーに 使用されている音律です


大雑把に見てもらっても
上部の方が 比較的 ナダラカで
下部の方が トンガッているのが 分かると思います


昔の音律は このように 
調性が変わると 響きも変化するという特徴がありました


こうした 変化に富んだドレミを
バッハや ショパンは 耳にしながら
曲を 作っていました


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


平均律

19c


これが 現代の我々が 何気なく聞いているドレミです
全ての和音が 同じカッコをしているのが 分かると思います
よって どの調で弾いても 響きは オンナジに聞こえます


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


このような 調性の特徴を 言葉で残してる人もいます


マッテゾン
Mat


グレトリー
Gur

 

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2006.12.17

響の断層④ ボンテギ配置

調律の世界では
倍音どうしが 「ハモった点」 にある時
「純正」 とか 「ピュア」 といいます


この 純正な音程だけで 調律ができれば
音の設計図は 必要なかったのですが
そうは トンヤが オロサナかったワケです


1オクターブの中には 
7個の白鍵と 5個の黒鍵があります
合計 12個の音が あります


5doken_1


音の設計図には 五度圏図というものを使います
時計の 12時が ドの音で
右に 5度ずつ ソ レ ラ ミ シ・・・ と 最後はドに戻ります


白鍵は 7つの音ですから 
とりあえず
7つの音だけ 調律してみましょう


まずは ドから ドミソを ピッタリに合わせます
そして ソから ソシレを ぴったりに合わせます
最後に ドから ドファラを ぴったり合わせます


Junseiritu


さて 上図の通り ドミソ ソシレ ファラド という
主軸になる 和音は ピッタリと 純正になったのですが
ラとレの間が 「どひゃー!」 となってしまいました!


「ドヒャー!」は 耳できくと
グワングワン ものすごく ふたつの音がズレていて
としお も アケミ も 驚くくらいオンチに聞こえます


この 「どひゃー!」 で グワングワンという 
ずれた音どうしの 「ゆらぎ」を 「うなり」 といいます
ウナリの無い状態が 「ピッタリ」 で 「純正」 で 「ハモった」 ことです


・・・・・・・・・・・・・・・


調律講座であれば ここから
純正3度を 得るために生ずる
ジントニック シントニック・コンマを説明するのですが・・・


あまりに 専門的な領域になり
たいして 面白くないので ここでは軽く いきましょう


ま 七つの 白鍵だけでも ウナらない音程で
調律ができないわけですから
12個の音になると もっと 無理がでてきます


上図の 「どひゃー!」には 22匹のボンテギがいると 想像してください
純正な3度のためには 4つの5度で 
この22匹のボンテギを 分け合わなくてはいけません


更に 12個の音ですと 
ウナらない5度と ウナラないオクターブの間には
24匹のボンテギが 発生してきます


一人で 20匹以上のボンテギを 担当すると
思わず ヘドが出てしまうので
これを いかに みんなで分け合うか・・・


これが 様々な音律の ボンテギ配置につながっていきます


しかし ボンテギの数を 見せられても
響のイメージは つきにくいので
視覚的に イメージしやすい図を 紹介することにしましょう!
 

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2006.12.15

響の断層③ 鍵盤の憂鬱

ワープロや パソコンの普及で
実際に 字を書く機会が メッキリ少なくなってしまった昨今ですが
手書きというのは 限りなく自由なものです


手書きでしたら 「あ」 に 「゛」 をつけたり
「ら」 に 「゜」をつけることも 可能です
どのように発音するかは 分かりませんが・・・


しかし キーボードは こうした表示が できません
あらかじめ インプットされた字しか 表示できないのです
そう キーボード(鍵盤)には 便利さと引き換えに 不自由さがあります


Arapagu


音は 本来 限りなく自由で
音の高さや 音色 強さなど
一定に保つのは よほどの技術か 装置がなければ困難なものです


ためしに チューニングメーターに 向かって
「ラー♪」と 声を伸ばしてみてください
針がブレることなく 安定させられる人は 天才です


そのくらい 自由奔放な音を 
強制的に 一定に 閉じ込めてしまったのが
鍵盤楽器なのです


鍵盤楽器は 他の旋律楽器などと違って
あらかじめ インプットした音程でしか 歌ってくれません
鍵盤楽器の音は 自由を剥奪され 窮屈に存在しています


自由で 気まぐれで 凶暴なネコのツメを切ろうと
愛猫を 押さえつけると 飼い主は 血まみれになります・・・
そして しばらくは 愛猫に 嫌われます・・・


同じように 自由な音を 
あらかじめ 整列させてしまった鍵盤楽器は
いくつもの音程の間で ジレンマを生じさせてしまったのです


・・・・・・・・・・・・・・・・


前回 紹介したように 
音程は 音の中の 倍音どうしが 「ハモッた!」
という「点」で 誕生してきたのですが・・・


鍵盤楽器では この 「ハモった点」だけでは
事前にインプットできないという ジレンマに陥りました


ひとつめのジレンマは
ハモった5度(ドとソのような距離) と
ハモった3度(ドとミのような距離) だけで 調律することは不可能なコトです!


ふたつめのジレンマは
ハモった5度だけで
ハモった オクターブを調律することは 不可能なコトです!


Oct


ちょっと 余談ですが オクターブの話をしてみましょう


「オクト」は ラテン語で 「8」を意味します
ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド ←8個なので オクターブなんですね


タコは 8本の(オクト) 足(パス) で オクトパス


じゃ オクトーバーは なんで8月じゃないの? ってコトなんですが
これは 昔の暦が 3月から始まっていて 8番目だったのです


ちなみに杣少年は 1月 2月・・・ を 
「ジャニアリー」 だの 「フェブラリー」 だのと知らずに
英語では 「ワンムーン」 「ツームーン」と 本気で思っていました・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


てなワケで 鍵盤楽器には 
あらかじめ インプットされるべく
音の設計図が 必要になってきたわけです


これを 「音律」と いいます


音律は 古来より たっくさん設計されていますが
大きく フタツに分けるコトができます


① とにかく ハモった3度を ひとつ以上欲しい
② ハモった3度を 必要としない


ちなみに 現代 我々が耳にしている 
「平均律」という 音律では
ハモった3度も ハモった5度も 採用されていません! 

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2006.12.14

響の断層② 一粒の音の中に

小さな 一粒の種の中には
あらかじめ ネッコや クキや 更に 葉や花の要素が
ぎっしりと 詰め込まれています


同じように 一粒の音の中には
あらかじめ ドレミの 全ての音が含まれています
前回 紹介した 「倍音」というカタチで 存在しています


Photo_71


具体的に 説明してみましょう


「ド」という音を出すと その中には
すでに ドミソ という音が 同時に鳴っていて
更に ほとんど聞き取りにくいのですが 他の音も 含まれています


これは 簡単な実験で 
誰もが 耳にプリズムをつけるコトができます


①左手で ピアノの 真ん中の 「ド」を 音がでないように 鍵盤を押します
②その状態のまま 右手で そのドより高い 「ミ」や「ソ」の鍵盤を 瞬間だけ叩きます
③すると 音のしていなかった「ド」の鍵盤は 「ミ」や「ソ」の音が 鳴っています


まあ 実験できない人も 多いかと思いますが
「ド」の中には ドドソドミソシドレミファ・・・という順番で
光の中の色が 一定のルールに基づいて 含まれています


これは ドに限らず ミでも ラのフラットでも
全ての音に 共通したルールです


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


さて こうして 一粒の音の中に
「倍音」というカタチで 様々な音が含まれているワケですが
実は この「倍音」がなければ 音階というのは 存在しませんでした


ある音と ある音が 同時に鳴って
それが 「ハモっている」とか 「音痴だ!」と 感じるのは
この 倍音どうしが ピッタリか ズレているかの 違いなのです


この 「ハモっている」感覚こそが
倍音によって いくつもの 音階が生まれる 大切な要素であって
ハモっている音を 順番に並べて ドレミが誕生しました


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


さて ここから ちょっとヤヤコシクなりますので
関心の無い方は 次の段落まで ハショって下さい


Baion


「共通倍音早見表」なるものを 作ってみました
(右クリック⇒リンクを開く)


左の縦の列が 鍵盤だと思って下さい

で 一番上の C(ド)という列を 横に見ていって下さい
2 とか 3 とか 数字が入っています
その数字の 上にある CとかGが 倍音の音名です


さて こんな観察を してみてください

Cの列を 横に見ていって 「3」のある縦の列を 下におりていってください
そこに「2」という数字が 初めて出てきます
その 「2」の列を 左になぞっていって下さい

すると G(ソ)という鍵盤に 辿り着くと思います


これは Cの3番目の倍音と Gの2番目の倍音が
同じ高さで 共通して存在しているコトを 示しています


同じように Cの4 は Fの3 と同じ位置ですし
Cの5 は Eの4 と同じ位置に 存在しています


これが 倍音と 倍音を利用して出来た 音階の配置の実態です
上部の「純正音程比」 という表の 数字は
倍音が 互いに接する数値でもあります


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


さて ハッショッた方々も 合流してもらいましょう


トシオが 「ドー♪」と 声を出して
アケミが 「ミー♪」と ハモる時
アケミは トシオの「ド」の中の 「ミ」の成分を 知らずに聞き取っています


それが ピッタリ同じ高さで 歌えると
アケミは 「ハモったわ!」と 感激でき
ずれていると 「オンチ!」と トシオに怒られます


ま そんなふうにして やっとこさ捕まえて ハモった音を
並べることで ドレミが誕生しました


ま マトメとして
一粒の音の中の ルールを持った倍音を 聞き分け
その 倍音を利用して ドレミが存在するというワケです!


では その ドレミは どのような関係で
鍵盤の上に 存在しているのでしょうか?
次は その設計図を 紹介してみたいと思います


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2006.12.13

響の断層① 耳のプリズム

光の中には たくさんの色が あります


例え その光が 透明であっても
たくさんの色が重なって 透明になっています


我々は 虹を見るとき
その透明の中の たくさんの色に 出会うことができます


Niji060708


実は 「音」の中にも 光と同じように
たくさんの 色が含まれています
その 音の中の色は 「倍音」という名前がついています


調律という作業は
「音の高さを合わせるコト」 と
「響を創る」 というフタツの結果を生み出します


そして この調律という作業は
必ず フタツ以上の音を出して
それぞれの光の中の色(倍音)を 同じにしたり ズラしたりしています


Prizm


調律を始める時 最初に訓練するのは
この 光の中の色を 聞き分けるコトです


耳にプリズムがつくまで 
透明な光の中の 様々な色を 聞き分け
自在に操れるように ただただ 特訓します


そして 同じ色を感じて それを重ねることが できるようになると
今度は それを 少しずつ ズラして
ぼかしたり にじませたりします


そうやって ドレミの音階を ピアノ全体に散りばめ
そうやって ピアノの響を 創っていきます


Nijiwotukamaeta


さて 今回のテーマは 「音律」です
音律というのは ドレミ という 「音階の設計図」 のコトです


現代の 我々が 普通に聞いている ドレミと
ショパンが バッハが 耳にしていた ドレミは
実は 異なるものなのです!


では それぞれの時代の ドレミが どのようなものだったのか
そして それらは 楽器や作曲に どのような影響を 与えたのか
更に 「音律」と 実際の「調律」という関係を 紹介していきましょう


どこまで イメージしやすく説明できるか 甚だ不安でありますが
筆者の力不足を 読者の想像力で 補っていただければ
これ幸いなり!

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2006.12.11

湘南地区研究会

厚木 文化会館


湘南地区研究会


日本ピアノ調律師協会
湘南地区の 研修会


「スタインウェイの秘密 構造と実践」
講師:常見保夫
使用ピアノ:スタインウェイD-274


うーん 微妙ですね・・・


知らないコトは いろいろあるのだけれど
このテの講習会で 得たいのは
知識ではなくって トキメキなんだよね


よっしゃ 明日からの仕事も がんばろう!って
そういう気持ちに なりたかったんだけれど・・・
まあ 自分が悪いのかな・・・

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2006.03.21

羊三昧な一日

富士宮 まかいの牧場


日本ピアノ調律師協会 関東支部9班のイベント
ピアノの響 それは 地球の響シリーズ 第3弾
協会員や その家族ら 16名が参加した!


第1弾は 鉱物を取り上げ ピアノ弦の工場見学 (05年9月8日)
第2弾は 植物を取り上げ 森林科学園見学 (05年11月3日)
そして 動物を取り上げた今回は 羊三昧な1日!


ピアノ弦を叩いているハンマーは 羊の毛で作った
硬ーい フェルトで 出来ている
それなら ということで 羊の毛刈りから フェルト作りまでを体験!


毛を刈られるのは 4歳のメス羊 「マチコ」
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初めての 羊毛刈りに挑戦! (はさみでチョキチョキ)
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1年分の羊毛を失った マチコ・・・ (寒そう・・・)
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当然 昼食はラムやマトンの ジンギスカン! (マチコ ・・・美味いぜ!)