ガソリン
ガソリンスタンドで お釣りをもらう時
「え? これだけ?」 と ビビってしまう
ああ 本当に 値上がりしてんだ・・・ あらためて実感
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杣が 初めて自動車に ガソリンを入れた時の話をしよう
あえて 「自動車に」と注釈を加えるのは
優秀な生徒として 教習所を卒業する以前から
杣は 原付免許を持っており MTXなる モトクロスなバイクに乗っていた
なもんで バイクにガソリンを入れたことなら 数え切れないほどあり
正確な価格は忘れたが まあ たいした金額にはならず
いつも 持ち合わせの小遣いで 給油は可能だった
「新しい車を買うから 今の車がいらなくなった 欲しければ取りに来れたし」
浜松修行での2年目に 我孫子の実家から かくなる連絡を受け
連休の時に 悦びいさんで 帰省した
そして 東名をかっ飛ばし 浜松に帰り
あー オレの車だ! と 市内をウロチョロしてみた
いやー やっぱ 車はいーね!
しかし フト ガソリンが無くなってきていることに気づいた
エンプティーランプが 点灯している
嗚呼 どっかで ガソリン補給しなきゃ
でも ちょっと待て
車って どれくらい ガソリンが入るんだ?
慌てて財布を出してみると なけなしの 最後の1万円のみ・・・
もし 「マンタン!」と言って 1万円以上 ガソリン代を請求されたら どうしよう・・・
そうだ! マンタンじゃなくて
1万円分だけ 入れてもらえばいいんだ!
ああ オレって天才!
なもんで 街中の 老夫婦二人がやっている
しなびた ガソリンスタンドに 初めての給油に入った
オバチャンが 笑顔で近づいてくる
「すいません ガソリン 1万円分 お願いします」
『は?」
「あ いえ あの 今 1万円しかないので・・・」
オバチャンは 給油を始め 一度 事務所に引上げていった
事務所には オジチャンと 客らしき オッサンがいる
オバチャンが 杣の話をしたらしく 3人が こちらを一斉に見つめた
なんだか ニヤニヤしてやがる
車を運転するヤツは 1万円なんて せこいこと 言わないのかな
でも オレ 貧乏だし 仕方ないよな・・・
そして 給油が終わって オバチャンが笑いながら 料金を請求してきた
もちろん マンタンでも 5千円くらいだったと思う
ホっとしたのと同時に すっげー恥ずかしかった
浜松にいながら 習志野ナンバーの 杣の車は
逃げるように ガソリンスタンドを後にした