2007.11.26

ガソリン

ガソリンスタンドで お釣りをもらう時
「え? これだけ?」 と ビビってしまう
ああ 本当に 値上がりしてんだ・・・ あらためて実感


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杣が 初めて自動車に ガソリンを入れた時の話をしよう


あえて 「自動車に」と注釈を加えるのは
優秀な生徒として 教習所を卒業する以前から
杣は 原付免許を持っており MTXなる モトクロスなバイクに乗っていた


なもんで バイクにガソリンを入れたことなら 数え切れないほどあり
正確な価格は忘れたが まあ たいした金額にはならず
いつも 持ち合わせの小遣いで 給油は可能だった


「新しい車を買うから 今の車がいらなくなった 欲しければ取りに来れたし」
浜松修行での2年目に 我孫子の実家から かくなる連絡を受け
連休の時に 悦びいさんで 帰省した


そして 東名をかっ飛ばし 浜松に帰り
あー オレの車だ! と 市内をウロチョロしてみた
いやー やっぱ 車はいーね!


しかし フト ガソリンが無くなってきていることに気づいた
エンプティーランプが 点灯している
嗚呼 どっかで ガソリン補給しなきゃ


でも ちょっと待て
車って どれくらい ガソリンが入るんだ?
慌てて財布を出してみると なけなしの 最後の1万円のみ・・・


もし 「マンタン!」と言って 1万円以上 ガソリン代を請求されたら どうしよう・・・


そうだ! マンタンじゃなくて
1万円分だけ 入れてもらえばいいんだ!
ああ オレって天才!


なもんで 街中の 老夫婦二人がやっている
しなびた ガソリンスタンドに 初めての給油に入った
オバチャンが 笑顔で近づいてくる


「すいません ガソリン 1万円分 お願いします」
『は?」
「あ いえ あの 今 1万円しかないので・・・」


オバチャンは 給油を始め 一度 事務所に引上げていった
事務所には オジチャンと 客らしき オッサンがいる
オバチャンが 杣の話をしたらしく 3人が こちらを一斉に見つめた


なんだか ニヤニヤしてやがる
車を運転するヤツは 1万円なんて せこいこと 言わないのかな
でも オレ 貧乏だし 仕方ないよな・・・


そして 給油が終わって オバチャンが笑いながら 料金を請求してきた


もちろん マンタンでも 5千円くらいだったと思う


ホっとしたのと同時に すっげー恥ずかしかった
浜松にいながら 習志野ナンバーの 杣の車は
逃げるように ガソリンスタンドを後にした


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2006.12.03

ピアノを造っていた頃

いつか ちゃんと連載する 予定なんだけれど
なかなか 文章を したためる時間が 無い


杣は 調律学校を卒業して
浜松の 大橋ピアノ研究所 という製作所で
2年間ほど ピアノ製作の 修行をしていた


Ohhashi


5人の職人達は 大正生まれの ロートル ベテランばかりで
杣は とにかく 力仕事が必要な時には
いろいろな部署から 呼びつけられ 手伝わされていた


基本的には 弦を張る工程の前後を 担当していた


2_2


月に 12台くらいの アップライトを製作し
夏と冬には グランドピアノを 製作していた


わずか 6人の 手作りのピアノ工場


杣が この工場を卒業して 僅かヒトツキ後 
社長が 入院してしまい 
半年後には 他界してしまった・・・


大橋ピアノは 今はもう無い


日本の 手作りピアノの 最後の最後に
たまたま 杣は 研究生として もぐりこむことができた
そして その経験が 今 どれだけ 財産になっているか・・・


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学生時代には
宇都宮の イースタイン というメーカーに見学に行ったり
夏休みには 浜松のクロイッツェルに 体験入門させてもらったりした


ピアノ製作に 携われた ギリギリの時代だった


ピアノ大国 日本も 
また 新たな展開をしていくのだろう


大きなメーカーには 出来ないコトを
小さなメーカーが 補って
そうやって とれていたバランスも 今は昔


オーハシで 最初の一歩を 踏み出したせいなのか・・・
自分は いつまでも マイナーでいたいと思う
小さくても やりたいコトを やれるスタンスで いたいと思う


それは お金や 名声では 決してなびかない
ロートル ベテラン達が 常にこだわっていたことだった


製作現場の オーハシは 無くなったが
ピアノは 今でも存在する
そして オーハシの精神も 今でも 存在している

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2006.09.10

金色の音叉

秘密工作員の 杣は
調律屋を 装っているために
小物への配慮も 忘れない


Photo_40


キーホルダーには 音叉なんかを
使っちゃたり なんかしちゃったり している・・・
ウフフ


これは 便利である
いつ いかなる時でも
ラの音だけは 確認できるのだ!


どうだ! 調律屋っぽいだろう!
わっはっはっは!


Photo_41


まぁ でも 実は
これは ベーゼンドルファー と刻印されているとおり
ラの音は ウィーンピッチの 443ヘルツなんだけどね・・・


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正直に言おう


調律学校の頃
ベーゼンドルファーのショールームに 見学に行き
ベーゼンの名が刻まれた 音叉を見て 杣青年は狂喜乱舞した


当時は ベーゼンが好きで
なけなしの小遣いを 使い果たし
この音叉を ゲットしたものだ・・・


買った当初 この音叉は 金色だった!


おー 金色の音叉だ!
それも ベーゼンの名前入り!
当時の 杣青年が 宝物リストの No1にするのも 分かるだろう


で この 金色
ちょっと くすんでるから もっと ピカピカにしよう!
と ピカールという 研磨剤で ゴシゴシ 磨きだした・・・


・・・ところが


磨いたトコだけ だんだんと 銀色になっていくではないか・・・


そう この音叉 素材は 普通のステンレスで
あろうことか そこに 金色のラッカーで
着色していただけなのであった・・・


ガガーリンも びっくり!
・・・というより ショックだった


で マダラに金色というのも カッコ悪いので
結局 全部 ラッカーをはがし (メッキでもないんですぜ!)
今の シルバーな音叉に 脱皮させてあげた訳です・・・


ちょっと 想像して欲しい


自慢したがり屋の 杣青年は
この 金ピカの音叉を 調律学校の同級生に見せ
「へへ オレ様は ベーゼンの金の音叉なんだぜ」と
ミンナに嫌われながらも 一人 悦に入る予定だったのに・・・


さらに!


この音叉は 減衰時間が 極端に短い!
いわゆる 「鳴らない音叉」だったのです!


音叉にも いろいろありまして
すぐに 音が消えてしまうヤツは 
調律屋の卵としては 使いにくかったのですね・・・


というわけで
自慢どころでなく
使いモノにもならず・・・


キーホルダーに なってしまった訳です

唯一の利点は
この キーホルダーを 落とした時
素晴らしい音がするので すぐに 気づくコトくらいですかね・・・


 

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2006.03.22

パパラファックス

初めて 杣のアジトに FAXが入った日
杣は 狂気乱舞し 早速 FAX器を使ってみたくなった
・・・が 送る相手が いない・・・


すると 説明書の中に パパラファックス(だったと思う)のチラシがあり
そこに登録すると なんでも いろんな情報を FAXしてくれるということだった
杣は 早速 必要事項を記入した (当時は個人情報流失に無防備だった)


で 送ってみた (ワクワク!) ・・・が うまくいかない (アレ?) 
もう一度 送ってみた (ソレッ!) ・・・それでも うまく送れない (アレレ?)
送ったはずの用紙が 下からビローンと 出てきてしまうのだ!


説明書を読み直して 更に挑戦! (コンドコソ!)
・・・やっぱり 用紙が出てきてしまう、、、
(なんじゃ コリャ! 不良品か!?)


すると 突然 電話が鳴った
パパラファックスの事務局からだった
『あのー 何度も同じFAXが届いてるんですけれど・・・』


「いや そんなハズないんですけど 何度やっても戻ってきてしまうんです」
『いえいえ ちゃんと届いてますから もうFAXしないで下さい』
「おかしいなー 用紙は まだ手元にあるんですけどね」
『・・・あのー FAXというのは 内容だけ送るもので 紙は送れないんですよ・・・』


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2006.02.23

スリッパ事件

その日も サロンコンサートが終わって
演奏者と 聴衆が 余韻を楽しむかのように
部屋中は 和やかな歓談に 包まれていた


杣は チェンバロに興味を持つ人達の為に
楽器のそばで 様々な質問に 対応していた
・・・事件は その時 起こった!


後輩が 隣に寄って来て 耳元で 小声でささやく
「・・・先輩 ・・・トイレ」


杣は (はっ?) と振り向き (こいつ 何言ってやがんだ?) と思った
(子供じゃないんだから トイレくらい 勝手に行けよ!)
コンサートは 終わったのだから いちいち断る必要も無い ・・・シカトしていた


しかし・・・ 再び 後輩が 真剣な 表情で つぶやく
耳元で 小声で 「・・・ですから 先輩 トイレの・・・」
杣は 妙にいらだち 『トイレくらい 勝手に行ってこいよ! 1階にあるから!』


それでも なお 後輩は 申し訳なさそうな 声でささやく
「いや 先輩 そうじゃなくって・・・ そのスリッパ・・・」
杣は 言われるままに 不機嫌に 自分のスリッパを 見下ろした


が!


周りを 取り囲んでいる お客さん達と 
自分のスリッパの 色が 違うのだ!


あ!


杣は コンサートの休憩時間に 慌てて調律を直し
そのままトイレに 駆け込み
後半のプログラムに間に合うように 猛ダッシュで 客席に帰ってきていた


その時 どうやら トイレのスリッパを
履いたまま 客席に 戻ってしまったのだ!


すまぬ!


後輩に 心の中で 侘びと 感謝を つぶやき
杣は お客さんの群れを かき分けて
慌てて トイレに戻って行った・・・


それ以来 スリッパのある会場の仕事では
決まって 後輩は 無言で ニヤリと 侮蔑の視線を投げかけてくる・・・


(左が お客様用スリッパ  右が 杣大先輩愛用トイレスリッパ)

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2005.12.29

豚のコカンセツ

立川のオンボロアパートに住んでいた時代


友 「一人暮らし してるんだって? 食事とか ちゃんと摂ってるの?」
杣 『あー ちゃんと自炊してるよ!』
友 「えー 凄いじゃん! 杣君って 料理できるの?」
杣 『料理くらい ちょろいもんさ! たいがいのものは 作れるよ!』

友 「どんなもの 作れるの?」
杣 『そうだね、、、最近は 豚のコカンセツに ハマってるかな?』
友 「コカンセツ? そんなもの売ってるの?」
杣 『うん 立川のスーパーに売ってるよ! 安くて美味いんだ これが!』

友 「どうやって 食べるものなの?」
杣 『どうって、、、 ただ普通に 野菜とかと炒めるだけでも 美味いよ』
友 「ナンコツみたいな食感なの?」
杣 『いや 普通の肉だよ 肉!』

友 「・・・もしかして・・・ コカンセツって どんな字なの?」
杣 『だから 漢字だと 小・間・切 って書くんだよ!』
友 「・・・それって コマギレって読むんじゃないの?」
杣 『えっ・・・!?』

(注:最近のスーパーでは 「小間切れ」 と 「れ」 が付け足されております!)

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