09. 12. 01

FF-49 スプリングの取付

そんなワケで 春も接着はしない
あ 違った
スプリングも 接着はしない


0.5ミリの穴に
0.25ミリのスチールワイヤーをつっこむ


A


ワイヤーの先端を 折り返す
これで 0.5ミリより 僅かに太くなる


B


口細ペンチで
ジャック前面の穴に 強引に突っ込む!


C


ワイヤーを曲げる
この曲げる位置は レジスターの スプリングの溝までの距離より
ほんの少し 短くして ゆったりと 弧を描く程度が ちょうどいい


D


ワイヤーを切断する
長すぎると 振動してる弦に当たって エイズノイズになる


E


実は このスプリングが効いてる箇所は
レジスターの高さなので 
スプリングの役目としては これほど長い必要が無い


しかし 調整などで ジャックを抜く時
短いと スプリングが 弦の向こう側にいって
ひっかかって抜けなくなる


スプリングの強度は
静止状態 一番鍵盤が沈んだ状態
双方の時 ジャック背面が レジスター内面に密着するくらい強くする


ただし 強すぎると バンパーがレジスターにひっかかって
ジャックが下がってこなくなるので 
その場合は 少しずつ弱めて調整していく

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09. 11. 30

FF-48 バンパーの取付

人は いつ死ぬか 分からないものだ
もし この楽器が完成前に あるいは 完成後でも
私が死んでも 誰かに 治してもらえるように 説明を 残しておこう


バンパーは 接着しない
では どのように ジャックの中に
留まっているかというと・・・


1


前面の穴から テグスを通したら
口細ペンチで テグスをつぶす


2


つぶされることにより 穴より大きくなるので 
背面から これを引っ張れば 硬いメープルの中で
テグスは 動くことなく留まる


3


背面で もうひとつの穴に テグスを通す


4


背面でも 同じように テグスをつぶし
前面から 引っ張る
これで テグスは ジャックに固定される


5


引っ張る力が弱いと
バンパーは 大きくなりすぎる可能性があるので
その デッパリ具合を確認しながら 引っ張る


6


前面の ふたつの穴から出たテグスは
ニッパーで 切断して 出来上がり

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09. 11. 25

FF-47 下手な説明

「さっぱり 分からん」 
そんな お叱りメール いただきました
すんまそん


Img_3303


ジャックだけでなく
ずいぶん前に 投稿した
強弱レジスターにも工夫があったわけで・・・


この 背面側の レジスターは
バンパーが 乗り越えられるように
上下のテーパーがついてるんです


このテーパー というか 三角を
よっこらっしょ と動くと
ジャックのヘッドは もっと大きく振れて
ツメと弦の距離が 変わるというもの なんですが・・・


どう? だめ? はぁぁ


ちなみに ボディ下の調整ネジは
バンパーと レジスターの距離を調整するもの


ボディとヘッドの間のポストは
弦とツメの高さを 調整するもの


この2箇所は 別々に調整できないと
なかなか 思った通りの動きにならないんだよね


Img_3301


実際の寸法は 上記の通り


これで ようやく ジャック製作に着手!
ボディは タフなメープル財を使用
穴 あけ終わったら ツルツルにバフをかけて 摩擦を軽減!


Img_3046


お 今日は 切腹自殺の日だ!
合掌!

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09. 11. 24

FF-46 ジャック背面

ピアノのアクションには ふたつの種類がある
ひとつめは 突き上げ式 と言われている プッシング・アクション
ふたつめは 跳ね返り式 と言われている バンビング・アクション


で この強弱ジャックは バンパーをつけてるので バンビング・アクション


背面の0.2ミリくらいの突起を
レジスターにぶつけて
ジャックの速度に応じて ツメと弦の距離が変わるというもの


Img_2754


07年のモノは 0.6ミリくらいのテグスを
ジャック背面の 幅 いっぱいに取り付けていた


幅が広いと 安定感はあるけれど
戻ってくる時の摩擦も 大きくなる
なので 今回 最初は 上写真の左のように やや幅を狭めた


Img_3228


けれど 試していくうちに
もっと 狭くても強弱が出ることが分かり
最終的には 幅の1/3くらいのバンパーで決着


材質は 0.435ミリのテグス (7号の釣糸)


最初は金属を考えていたんだけれど
衝突させる時のノイズが うるさいから
ツルツルして 硬すぎない テグスを選択


バンパーは 溝が彫ってあって
そこに 半分 埋まっているので
背面から 飛び出ているのは 0.2ミリ


この 僅かな突起は
テコの原理で ツメの部分は もっと大きく振れる


ゆっくり押せば ノーマルなツメの位置のピアニッシモ
ちょっと早く押せば ツメは やや弦に近づき ピアノ~フォルテ
しっかり早く押せば ツメは 完全に弦を引掻きあげ フォルテッシモ


なーんて 簡単には いかないのだけれど・・・ 

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09. 11. 23

FF-45 ジャック前面

ジャックのボディ
この前面には スプリングがある


このスプリングによって
ジャック背面は レジスターに密着し
独特の軌道を移動することになる


Img_3226


この スプリングの力は
凄く微妙なのだが
とても 重要な意味を持ってくる


スプリングの力が 強ければ
より安定するのだが
ジャックの背面にあるバンパーによって 下降が妨げられる


スプリングは 太さや形状だけでなく
その長さも しなやかさに 大きく関係してくる


通常のチェンバロの タングのスプリングも
センターピンのすぐ上辺りを プッシュしている場合
スプリングのしなやかさは ほとんど無い状態なのだが
あまり この辺まで意識している製作家は いないようだ


Img_3227


07年のジャックでは 真鍮で造っていたが
今回は アイアンも試して 
結局 スチールの0.25ミリになった


試行錯誤の結果
この太さ 長さ 形状が
安定感と しなやかさのバランスが 一番取れている


このスプリングのおかげで
今回のジャックは 鉛を入れる必要がなくなった


新しいメカニックは
試行錯誤している時間の方が長い
でも それだけに上手くいくと 凄く嬉しい


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09. 11. 20

FF44 ジャックの作り直し

Img_3225


07年に製作した 強弱ジャックは 写真の右


ジャックの動きに関しては 
絵でも描かないと うまく説明できないから
おいおい


右と左のジャックを 見比べてみると
右の方が 鉛が入っていて 重そう・・・


そうなのです


この重量を減らす工夫を 
この2年間 結構 考えて 考えて
ようやく 左のような スッキリしたものが 出来上がりました


Img_3079


強弱ジャックは 頭部(ヘッド)と胴部(ボディ)に 分かれてます


ボディは 鍵盤から バンパー(後述)までの距離が調整できるようになっており
ヘッドは レジスターから 弦までの距離を調整できるようになっております


ジョイントは 真鍮の2本のポスト
というか ピアノのセンターピン(#19)なんですが・・・


ピアノのメカニックでも
ワイヤーが使われているのは
曲げることによって 調整するため


なもんで この部分は
ヘッドの高さの調整だけでなく
弦とヘッドの距離を 変化させるためにも 重要なのです



ちなみに ヘッドに書いてある番号は 関係ありません
というのも このヘッドは 99年に初めて製作した
19分割チェンバロのジャックの 再利用


分割君は 鍵盤とジャックだけ残して
朝霞市の処理場で 成仏したのでした・・・ 合掌
なので デビュー作の遺品を 再利用するのも 涙々

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09. 11. 18

FF 冷やし中華 初めました

あまりに長いブランクがあった為
お忘れになられた貴兄に
あるいは 最近 遊びに来て下さり始めた諸兄へ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


   前回までの あらすじ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


このプロジェクトを開始したのは
なんと 4年前の秋だった
まだ このブログが誕生して2ヶ月くらいの頃である


御存知ない方の為に 少し説明をしておこう


このブログでも頻繁に登場する チェンバロ
英語のハープシコードの方が なじみのある方もいらっしゃるかも知れない
どちらも 同じ楽器で 弦をはじく鍵盤楽器である


この楽器は ピアノのように
タッチで強弱をつけることが出来ない
もっとも 強弱をつける必要がないほど 完成されたものなのだが


そこに 本部から指令が下ったのが 2005年10月
なんと 強弱がつくチェンバロを製作せよ と
つまり まだ世の中に存在していない楽器を 発明しろと


ふうん


ま 秘密工作員としては 本部の指令に背くことなど 出来るはずもなく
まもなく 秘密工作活動が 開始されたワケだ
「Fを製作せよ」というカテゴリーが その日々である


紆余曲折を経て 2007年5月
なんとなく 強弱の出る状態まで かこつけた
が トッカン工作だったので それは悲惨なものだった


072


実は このトッカン工作は
2007年5月末から6月に 韓国はテグで開催された
世界の調律師が 大集合する国際大会への出展のタメであった


300年ぶりの 新しい鍵盤楽器を
韓国でデビューさせちまおうぜ! という 野心満々な挑戦だったのだが
世の中 そんなに甘くない  ・・・・大失敗だった


なもんで 2007年春から この楽器は
製作途中であるにも関らず
封印され 静かな眠りについていた


なんと この楽器を差し置いて
その間に 貸し出し用 2段チェンバロ権兵衛君も 作ったり・・・
どっちが兄貴で弟か もはや 私も分からない


071


私は 実にムラが多い
ムラムラの方が多い


しかし 本部から 度重なる催促を受け
いよいよ 秘密工作員の資格剥奪という憂き目に逢い
渋々 作業を再開することに あいなった


2年半ぶりの 強弱チェンバロは
ふてくされ すこぶる 御機嫌斜めだったが
なんとかピッチも安定し いよいよ 最終楽章に入る


予定では こんな感じだ


通常 強弱の出るバック8フィート 1本
右のペダルは ダンパー  
左のペダルは フロント8フィートのカプラー


音域は FF-f3 の5オクターブ
バフストップをかければ まるでハープ! (←妄想)
バロックピッチと モダンピッチの トランスポーズ可!


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本音も 付け加えておこう


本当は ちょっと怖い
完成しなかったら カッチョ悪いし
成功しない確率の方が高いし


プライド高いし ナルシストだし
そのくせ メンタル弱めで 躁鬱甚大


でも 成功失敗の結果は もう諦めて
ピアノ生誕300年の今年中に
とりあえず 終わらせることにしたいと思わなくなくもないけど・・・


そんなワケで 明日から 連載再開です


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07. 05. 27

FF43 鍵盤まわり

フタがついて ジャックレールがついて
あとは 鍵盤が出てこないように 鍵盤まわりの部材を製作します


ネームバテン(鍵盤おさえ)
鍵盤が 上に外れてこないように 抑制してくれます
通常は ここに 製作者の名前や 生産地 年号が記入されます


キーサイドブロック(拍子木)
鍵盤が 左右に動かないように 抑制してくれます
トランスポーズ用のスペースも 重要です (今日のネタ)


口棒
鍵盤が 前に出てこないように 抑制してくれます
ピアノでは 木口の下面は隠れるように 取り付けますが
チェンバロは 鍵盤あがきと 鍵盤の厚みの関係で 拍子木をストップさせます


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


今回の キーサイドブロックは ナチュラルキーと同じ
ウォルナットで 製作しました


まずは 高音側のブロックですが
鍵盤と ジャックの位置を確認して 
その隙間の幅に整形し 接着します


この時 口棒と 右側の壁に ピッタリくっつように
整形して 位置を決めると 鍵盤はズレにくくなります


Img_2067


その 高音部のブロックに 鍵盤1個分の厚み(約13ミリ)の板を挟みます
これは 後述しますが ピッチを変更する トランスポーズのための部材です
(現代の事情に対応したもので バロック時代には無かったものです)


Img_2068


そして 低音側の隙間に ブロックを整形し 接着します


Img_2070


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


トランスポーズ


現代のチェンバロを使用する 演奏の現場では
少なくとも ふたつのピッチが 求められています


ひとつは 現代の A=440ヘルツ
これは モダンピッチと呼んでいて
現代のフルートや ヴァイオリンと共演する時のピッチです


ふたつめは A=415ヘルツ
これは バロックピッチと呼んでいて
いわゆる “古楽器”との共演で 必要なピッチです


(ピッチに関しては 更にいろいろあるのですが・・・・割愛!)


この 440と 415は ほぼ半音ほど 音の高さがズレています
なので 鍵盤を 半音ずらすことで 
1台の楽器は ふたつのピッチに対応することができます


鍵盤を 低音側に寄せれば バロックピッチの 415
高音側に寄せれば モダンピッチの 440
この隙間を埋めるのが 13ミリの厚さの スペーサーです


Img_2097


杣は このスペーサーを 簡単に取り出せるように
奥を押すと 前が飛び出て 
指がかけられるように 穴を あけてあります


Img_2099


どうせ 見えない部分なので
5月ということで 鯉のぼり を描いてみました!


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07. 05. 26

FF42 ジャックレール

鍵盤を 押した時 ジャックが飛び出でない為に
ジャックレールというモノが あります


チェンバロによっては このジャックレールに
ジャックがストップされることによって
鍵盤の沈む深さが 決定するものがあります


このFも ジャックレールによって キードロップ(鍵盤あがき)が
決まってしまうので 上下に調整できるようにします


・・・・・・・・・・・・・・・・・


まずは ジャックレールを留める 金具を作ります
いつもなら 杣は ここを磁石にするのですが
今回は 強打されたときのコトを考えて フック式です


Img_2071


フックの分 ジャックレールを えぐっておきます


Img_2072


ジャックレール受けを 高音側と 低音側に それぞれ取り付けます
ここで 上下の調整が出来るように 可動式にしてあります


Img_2073


レール受けに フック受けを取り付けます
フックと同じ 直径2ミリの 真鍮の棒を曲げた
簡単なモンです


Img_2076


で 完成すると こんなふうに ジャックレールを固定してくれます
ここにガタがあったりすると ノイズの原因に なっちまいます


Img_2077


ジャックレールの裏には クロスを貼って
ジャックが衝突する音を 吸収させます
とりあえず 1枚だけ貼ってあります


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てな感じで 普通より かなりデカめの ジャックレールが取り付きました!


Img_2083

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07. 05. 25

FF41 フタ

根性が無いくせに 諦めの悪い杣は
姑息にも 作戦を変更して 韓国入りを目指しております


機能の完全な完成は 不可能なので
とりあえず 強弱アクションの 1列だけでも
演奏できる状態で 持ち込もうと・・・


フロントと ペダルは 帰国してから ゆっくりと・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


しかーし 持っていくには とりあえず
フタと ジャックレールと 鍵盤まわりが 
完成していなければいけません

 
なもんで 先に フタを作ります


Img_2062


まずは 楽器から型をとった合板を カットします
この時は ちょっと大きめに 切り出しておきます


Img_2065


続いて 楽器に合わせて トリマーで削っていきます
この後 切断面を処理します


本来なら この時点で 切断面に 木口テープを接着するのですが
今回は 時間節約のため 帰国後へ 後回し
(けっこう カッコ悪い状態ですが・・・)


Img_2079


でもって 蝶番(ちょうつがい)をつけて
とりあえず フタが付きました
これで 持ち運びの為のカバーが かぶせられます

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