広すぎる部屋 :追記
「広すぎる部屋」を書いてから
すでに 1年半が 過ぎようとしている
ジローは まだ 広すぎる部屋に 行ったまま、、、
杣が 実家にジローを預けて 半年ほど経った ある日
杣の留守電に こんなメッセージが届いていた
「もしもし 我孫子のジローです
お兄ちゃん 元気にしていますか?
こちらは 僕も おばあちゃんも おじいちゃんも
みんな 元気にしています
たまには 僕に会いに来て下さい またね」
杣の母親が ジローになりすまして 話している
というより このメッセージの言わんとしていることは
「ジローは すでに 我が家のもの」
という宣言でもある
杣は 「やられた!」 と思ったが
まあ それも良いか と 納得もしている
杣の実家では 18年飼っていた犬が その春に逝ってしまった
両親は かなり落ち込んでいたが
ジローを預けてから 再び 元気を取り戻していた
(その犬も 杣が高校時代に拾ってきた子犬だったが、、、)
父親にいたっては デジカメとプリンターを買い込み
毎日 同じようなジローの写真を撮っていて
杣が帰省する度に そのアルバムを見せようとする
今でも 時々 ジローに会いに行くが
ジローは 「このオヤジ 誰?」と言わんばかりの
警戒心丸見えの視線を 投げかけてくる
だが 「ヤー セッキヤ! ヤインマー! ネガ ヌグンジ モラッ?」
と韓国語で脅すと 思い出すらしく すり寄って来る
つくづく なんちゃって韓国語で ジローに語りかけていて
よかった と思う
だが ジローは 数年後に 杣のアジトに戻ってくるだろう
それは 杣の両親が 他界する時だろう
願わくば ちょっとでも長く 「その日」が 先になりますように
(広すぎる部屋 完)