2005.09.17

広すぎる部屋 :追記

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「広すぎる部屋」を書いてから
すでに 1年半が 過ぎようとしている

ジローは まだ 広すぎる部屋に 行ったまま、、、


杣が 実家にジローを預けて 半年ほど経った ある日
杣の留守電に こんなメッセージが届いていた

「もしもし 我孫子のジローです
お兄ちゃん 元気にしていますか?
こちらは 僕も おばあちゃんも おじいちゃんも
みんな 元気にしています
たまには 僕に会いに来て下さい またね」

杣の母親が ジローになりすまして 話している

というより このメッセージの言わんとしていることは
「ジローは すでに 我が家のもの」
という宣言でもある

杣は 「やられた!」 と思ったが
まあ それも良いか と 納得もしている

杣の実家では 18年飼っていた犬が その春に逝ってしまった
両親は かなり落ち込んでいたが
ジローを預けてから 再び 元気を取り戻していた
(その犬も 杣が高校時代に拾ってきた子犬だったが、、、)

父親にいたっては デジカメとプリンターを買い込み
毎日 同じようなジローの写真を撮っていて
杣が帰省する度に そのアルバムを見せようとする

今でも 時々 ジローに会いに行くが
ジローは 「このオヤジ 誰?」と言わんばかりの
警戒心丸見えの視線を 投げかけてくる
だが 「ヤー セッキヤ! ヤインマー! ネガ ヌグンジ モラッ?」
と韓国語で脅すと 思い出すらしく すり寄って来る

つくづく なんちゃって韓国語で ジローに語りかけていて
よかった と思う


だが ジローは 数年後に 杣のアジトに戻ってくるだろう
それは 杣の両親が 他界する時だろう
願わくば ちょっとでも長く 「その日」が 先になりますように

(広すぎる部屋 完)

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2005.09.14

広すぎる部屋 ⑩

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母さんという名の人間は 僕を抱き上げながら
「ジローちゃん淋しいの?でも大丈夫よ 
お兄ちゃんはすぐに迎えに来てくれるからね」
と言ってくれた

僕の父ちゃんは ここでは
お兄ちゃんと呼ばれていた

その代わりに
父ちゃんに良く似た おじちゃんがいる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あれから半年が経つけれど
父ちゃんはまだ迎えに来てくれない

だいたい 
この部屋が広すぎるからいけないんだ

こんなに広くなければ 
父ちゃんは ずっと一緒にいてくれたのに

僕は「広い部屋」を 「広すぎる部屋」
という名前に変えてしまった

(完)

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   今日のオマケ

   http://kankoku_manse.tripod.com/Korea_cooking/Posintan/
   「肉は こうして 美味くなる! ただし 犬フルエンザに御用心!」

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2005.09.13

広すぎる部屋 ⑨

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「もうちょっと辛抱してるんだぞ。もうすぐ着くからな」
父ちゃんは 僕を抱いたまま
階段を上がって 別の扉の前に立った

すると 知らない人間がニッコリとして
「まあジローちゃん、良く来たわね」と
歓迎してくれた

僕は別の人間の部屋の中に入って
いろいろ探検を開始した

すると いつの間にか僕のゴハンの皿や
トイレが運び込まれていた 

そして父ちゃんは その人間に
「じゃ 母さん しばらくジローを頼むね
また出張から帰ってきたら連絡するから」と話していた

そして父ちゃんは僕を抱き上げて
「ジローいい子にしてるんだぞ」と言って
今来た扉を開けて どこかへ行ってしまった

僕は扉の前に行って
「父ちゃーん、父ちゃーん!」と叫んだが 
父ちゃんは戻って来なかった


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   今日のオマケ

   http://pya.cc/pyaimg/pimg.php?imgid=6639
   「今日 杣は 真正面から ゴールを外していた、、、」

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