前略 森の中より ①
先日 森を歩いた
テクテク テクテク 汗だくになって
大自然の中の 小さな小さな存在になって
そこは 様々な音に溢れている
鳥や虫の声 風が葉を演奏して
そして 時々 密度の高い静寂
歩きながら いろいろ考える
自然の中に 美しい音は たくさんある
人工の中に 騒々しい音も たくさんある
でも 音は 音楽なんかじゃないんだ
メロディーや ハーモニー
それらは 音楽を記憶する上で
とても大切な要素なんだけれど
音楽は やっぱり 時間を聴くものだと思う
演奏という 音楽の行為で
一番 心の浸透圧に近いのは
時間を捕まえられることだと思うんだ
古い 音質の悪いレコードなのに
バチバチ ノイズに溢れてるのに
素晴らしい演奏に 感動してしまうのも
時間を 聞けるからなんだと思う
リハーサルの時
僕は ホールの座席で
サウンドチェックをしたりするんだけれど
客席は たくさんあって
その全てで 良いコンディションは
ありえないんだ
でもね
演奏者が 捕まえる時間を
鮮明に聴けるバランスだけは 確保したいんだ
山の中で 低い森 高い森
蝉の種類も 鳥の種類も 変化しながら
僕は それらを 全身で聴いている
本能のままの 音の洪水
沢のせせらぎ 風のささやき
重力と 圧力の 気まぐれなイタズラ
時々 自分の足音や 息の音が重なって
音楽も 大好きだけど
音も 響きも 大好きだから
また 森へ行こう
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