カイバイポー
駅前の洋菓子店の前に
雨の日も 風の日も
笑顔で佇んでいる少女がいる
誰に教わったか定かでないが
誰でも 彼女の名前は知っている
ある日 その店先を
若い夫婦と その間で両手を繋いだ
3歳くらいの幼女が通りかかった
幼女は ペコちゃんを見つけると
両親の手を振り払って
近寄っていった
そして つたない発音で
「チャンケンポー!」と 叫びながら
小さなコブシを ペコちゃんにつきつけた
「マケちゃったー!」
幼女は 楽しそうに叫びながら 母親を振り返ると
母親も 『あら 負けちゃったねー』と 明るく答えていた
その幼女が ペコちゃんと
ジャンケンをしてるのだと 理解するまで
3メートルほど 近づく時間がかかってしまった
それでも 幼女は 何度も何度も チャンケンポーを叫び
パーしか出せない ペコちゃんに グーを出して
楽しそうに 負け続けていた
私の記憶の中で
勝つことや負けることに伴う感情が
いつ育まれたのか分からないのだが
気がついた頃には 負けず嫌いだったから
きっと いろいろ 負け続けていた少年だったのだろう
ただ その幼女の 無邪気な負けっぷりを眺めながら
今でも 勝つことや負けることの
本当の意味なんて まだ 分かってないコトに気づかされた
そんな光景を 足を止めて ぼんやりと傍観している私に
両親は 恥ずかしそうに でも どこか嬉しそうに
軽く 会釈をしてくれた
私も 反射的に 会釈をしてしまったが
その中に ちょっと ありがとうを込めてみたものの
きっと うまく いかなかっただろう
そんなペコちゃんも
サンタになりすます季節がやってきた
木枯らしに吹かれても
相変わらず ペコちゃんは
笑顔で 舌を出し パーを出している
試しに コートのポケットの中で
手袋をした手を 握りしめて グーを出してみたけれど
やっぱり あの幼女のように うまく負けることなど出来なかった
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