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09. 10. 11

魚を食べなかったワケ

休日の午前
我々は 山中の渓流で
マス釣りに興じていた


私は フライを遠くへ飛ばそうと 
リールのついた竿を 前後に大きく振り回していた
ケンタは 普通の竿で イクラを餌にして
赤と黄色の丸いウキを見つめていた


まずまずの釣果に そろそろ昼メシにしようということになり
薪を集めてきて火を起こし ニジマスを串刺しにして
クーラーボックスのギネスで 乾杯をした


私は 出来立ての軍服を着て
ケンタは 30年代のミツゾロイを着て


というのも ケンタ曰く
「紳士たるもの いつでも正装するものです」
なので 動きにくいこと この上ないのだが
しぶしぶ 正装して 休日のフィッシングに勤しんでいた


確かに ポワロやホームズのドラマを見ると
いついかなる時も 彼等は正装している
なので まあ 紳士ごっこだと思って 軍服を着てきた


『ところで ヘイスティングス ピアノはどこまで出来あがったかね?』
「ハッ! ワトソン君 いい質問だ」


我々は お互いに探偵になりきっており
私はポアロで ケンタを 助手のヘイスティングス呼ばわりをし
ケンタはケンタで ホームズになりきり 私を 助手のワトソン扱いしていた


しかし のんびりと 焚き火を囲みながらも
楽器の話ばかりしている というのも
なんだかなー


そこへ バリバリ 登山の格好をした 娘さんが二人 やってきた
ナップザックを背負い 帽子をかぶり チェックの長袖に チョッキである
なんだか 絵に描いたような 登山コスチュームなのである


『わー これ 釣ったんですか? すごーい!』 一人の娘さんの驚嘆に
すかさず ケンタが紳士然として
「よかったら 食べていきませんか? まだ たくさんあるので」


ということで 我々は4人で 焚き火を囲んで 山のランチとあいなった
聞くところによると 彼女達は 大学時代の山岳部の友人同士だという
ナップザックから 弁当を出し 食べ始め ニジマスが焼ける間 歓談した


『お二人は どんな お仕事をされてるんですか?』 右の娘さんが尋ねてきた
ほら見ろ せっかく こんな出会いがあるのに
山中で 軍服とミツゾロイでは 怪しいこと この上ないではないか


しかし ヘイスティングス じゃなかった ケンタは シラっと言った
「探偵です」


はぁ? 


二人の娘さんは 固まったまま 私の方へ視線を向けてきたので
私は 激しく逡巡した・・・
ここで ケンタを差し置いて 自分だけ イイモノになるワケにはいかない


なので 笑顔で言ってやった
「私は 怪盗です」


二人の娘さんは 大笑いしてくれて
ケンタも 私のアドリブを 気に入ってくれたようで
なんだか 盛り上がっていった


娘さんは 「探偵さん」 と 「怪盗さん」 と 呼んでくれた
なのに 我々は互いを 「ヘイスティングス」 と 「ワトソン君」 と 呼び合っていて 
全く なんだか よく分からない状態だったが 盛り上がっていった


そこへ 一人の登山ルックの男性が 大声で叫びながら やってきた
「だめじゃないか! こんな焼き方では だめじゃないか!」
すると 二人の娘さんは 弁当を持ったまま 瞬時に立ち上がり
『あ! 石崎先輩!』 と 凍りついた表情になった


以前の私であれば その男性の勢いに気圧され
すいません すいません と 意味もなく 謝ってしまっただろうが
なんといっても 軍服を着た 怪盗ポワロ中尉に なりきっているのだ
思い切り ガンを飛ばしてやった


すると ケンタが おじけることなく 男性に向かって言い放った
「なんだ君は 失敬なヤツだな!」
おお かっちょいい!


しかし 男性は ひるむ様子もなく
我々の釣ったマスを 手際よく ナイフでさばき始めた
ちょうど アジの開きのように 次々と マスの開きが出来上がっていく


男性は 残っていた 全てのマスをさばいて 怒った口調でつぶやいた
「こうしないと マスの寄生虫が死なないんだ」
そして 血まみれになったナイフをしまい スタスタと行ってしまった


ケンタと私は 唖然としていた


しかし 娘さん二人は 驚愕したまま フリーズしている


私は言った 「二人の お知り合いの方なんですか?」
娘さん達は 互いに顔を見合わせて 『 え え まぁ 』
まだ 震えている


すると ケンタが言った 
「もしかして ストーカーかナンかですか?」
『 い いや そうじゃなくって・・・』


しばらくして 二人は ようやく座って
ことの次第を ポツリポツリと 話してくれた


石崎先輩というのは 大学の山岳部の先輩なのだそうだが
この夏に もう少し上流にある渓流で 
突然 激しく嘔吐して 悶絶して 亡くなってしまったのだそうだ


二人は 今日も その現場に花束を捧げ 供養する為に来たそうだ


そして なんでも 石崎先輩は
吊り上げたイワナの寄生虫が原因で 
食中毒のショック死をしたそうで・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


最近 私は 毎晩 ケンタから借りた
「シャーロックホームズの冒険」 か 「名探偵ポワロ」 のDVDを
一話ずつ見て 寝ることにしている


そのせいだろうか 夜に見る夢まで おかしくなってきてしまった


昨夜の夢は ここまでの記憶しかない
もしかしたら 私とケンタは 勇気を持って
現場に行って 調査を開始したかもしれない


いや 私のことだから
恐らく せっかく焼けたニジマスも 捨ててしまって 
アワワ アワワと 山を下ったかも知れない


なので 今日は一日 焼魚を食べる気には ならなかった

 
  

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Comments

。。。。途中まで真剣に読んでしまったではないですか・・・(爆)
すんごいストーリーの夢ですね。。。

Posted by: おーとも | 09. 10. 12 at 오전 9:41

Dear おーとも

朝起きて すぐに書き込んだので リアリティーばっちり!
というか 夢の中では 私も現実だと思ってたので・・・
27日 よろしくです! 5月のリベンジで!

Posted by: アノニモス | 09. 10. 12 at 오후 7:22

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