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09. 08. 04

ミッションC 浦和 デッド どんなもんズ!

浦和コミュニティセンター コムナーレ10F


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ピアノ 小倉貴久子
チェロ 花崎薫


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時々 素晴らしく デッド(響かない 残響がない)な 会場に出くわす
音楽専用に 作ったわけではないので 仕方のないことだし
ホールスタッフも 反響板を最大限に活用して 準備してくださった


一言で 「デッド」と言っても 様々な性格がある
ただ残響が無いだけで 楽器の音は 生き生きとしてる場合
残響が無いのだけど 直接音まで 散り散りになってしまう場合


今日の会場は 痛いデッドだった
音が とんがって 飛んでくるのだ
つまり 音が飛んでくるのは ありがたいのだが
痛すぎる とんがり感が ちょっと残念だった


リハーサル中 後輩が たまりかねて 近づいてきて言った
「先輩 これは ユニゾンで 少し やわらかくした方が いいですよ」
そう 調律屋は こういう環境でも 我々にできる領域で 
最善を尽くす方法を 模索している


「あ 先輩なら とっくに そういうこと 考えてますよね
 アタシなら そうするだろうな って思っただけですから
 生意気言って すいません」


恐らく 私が 黙っていたので 気を使わせてしまったようだ
『いや ありがと そうだね 頑張ってみるよ』


我々には 恐らく 相手は 分かっているだろうけど
それでも 気付いたことは 率直に進言する 暗黙のルールが存在する
それは 勇気もいるが 敬意でもあり いい仕事をする為には 重要なことだ


コンサートでは 少しでも
演奏者も 聴衆も 良いコンディンションで過ごせるために
いろいろな気配りと 準備と 実施が大切だと思っている


私は 同時に 別の可能性も考えていた
モダンピアノの弦を解放させて
少しでも 残響を利用しようというものだ


つまり 右のペダルを 踏みっぱなしにした状態の
ピアノを 近くに置いておくことによって
ぼんやりと 残響を 得ようという作戦である


なので 本番では リハよりも ピアノを近づけて
ふたを大きく 開けっ放しにして
棚板の下の ペダルのレバーにクサビを入れて ダンパーを解放した


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本番前の調律
ユニゾンは 潤った傾向のズラしかたを選択した


フォルテピアノは 3分の2が 二本弦
だから モダンピアノのように 三本弦のようなズラしかたは
次高音から上にしか 通用しない


どれだけの差が あるのか 分からないのだが


ピッタリ合ったユニゾンは 輪郭だけは 鮮明になる
しかし 奥行きや 伸びは 極端に少なくなるし
ダイナミックレンジの変化が つけにくい


では 少しズラした場合だが・・・


1本を高く もう1本を低く ズラすと
音は やわらかめになって ラウドにも感じる
大味ではあるが 音も伸びてくる


2本とも高くズラすと
音は やわらかさより 潤いが出てくる
でも ハーモニーを簡単に破綻させる危険もある


私は いくつかある こうした方法の中で
今夜は 潤いを優先してみた
第5倍音がからむ和音に ちょっとだけ ヒヤヒヤしながら


舞台裏で 様々な音を聞いていた
楽器の音 音楽の音 調律の音 拍手の音


私の こんな姑息な作戦の はるか上を
二人の演奏家は 悠々と 音楽で飛んでいった
なんだか 悔しいくらい 嬉しかった


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