カラーンラーン
狂った野獣のように 激しく踊る 真っ赤な炎
絶え間なく 吐き出される 真っ白な水
焦げる臭い 人々の喧騒 強力な照明・・・
火事を見たことがある
数週間後まで 火事場は 焦げた臭いがしていた
真っ黒になった 骨組みだけの 部屋の中に
無表情な 和風な人形が 二体 黙って立っていた
ュォオーーーー ュォオーーーー
比較的 静かな この季節
ケタタマしい消防車の サイレンの音
この音が 一番 嫌いかも知れない
炎がナニカを奪う時 それは あまりに歪んでいる
略奪でも 破壊でもなく 強引な変形であって 強力な消却であって
人間の犯せる罪など 稚拙にすら思えてくる
穏当な日々は なんて 狭い温度の領域なんだろう
太陽が あの位置に留まってることは なんて素敵なことなんだろう
人間は 火を使える唯一の動物ではなく
炎との距離を 唯一知っている動物に すぎないのかも知れない
カラーンラーン カラーンラーン
この季節 鎮火した後の 消防車の鐘の音は まるで福音
野獣が どれだけ喰い荒したかは 分からないけれど
炎が鎮まれば また 静かな夜が来る また 平べったい明日が来る
カラーンラーン カラーンラーン
通り過ぎる消防車に向かって
凱旋する 軍隊のように
思わず 感謝と ねぎらいを 心で唱えてしまう
カラーンラーン カラーンラーン
あらゆる ドップラー効果の中で
この音が 一番 好きかも知れない
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