ソウルに帰ってきた
ようやく インターネットに接続できる
PCからは 「薔薇の中の薔薇」が 流れている

例えば 君が 音楽家だったとしよう
演奏する為に コンサート会場へ行き
「音楽しなくていいから 適当に 楽譜通りに弾くだけでいいから」
そう言われたなら どんな気分だろうか
あるいは
演奏よりも 楽屋の掃除を頼まれて
一生懸命 綺麗にして いざ本番 という時になって
演奏する権利を奪われたら どんな気分だろうか
11月は いくつもの 大切な仕事をキャンセルして ソウルに来た
大切な人たちには 本当に申し訳ない気持ちで
だからこそ いい仕事をしようと 頑張った
この韓国での仕事を請けるにあたり Gとは 約束をした
コンサート前 1時間は 調律の時間にしてもらうこと
たった それだけの約束も 彼は反故した
とにかく 狂い易い楽器を含めて 2台の鍵盤楽器である
「良きコンサートが為に」
その為に 1500キロも離れた都まで来て また 裏切られた
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1曲1曲 ステージのセッティングが変わる
それも 音楽の邪魔にならないようにと 完璧な準備をして
ステージマネージャーも やっている
しかし これは 本業ではない
どころか 本来 そんなコト する義務もない
しかしながら ステマネを当然の如く考え リハは 無駄に長い
ま こんな愚痴は 明日で最後だろう
彼とは これからは仕事をしないどころか
2度と 口を聞くつもりもない
良きコンサートが為に
調律屋が出来ることは
楽器のコンディションを 最良の状態にすることでしかない
その権利さえ奪うセッキとは 共にいないことが 最良の解決だろう
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もうひとつ 事件が起きる
韓国では まだ 音楽的派閥がある
Gを最初に招聘したのは Jというチェンバリストで
後に Mというチェンバリストになった
この JとMは 同じ大学の 先輩後輩でありながら
仲が悪い どころか 敵対しあっている
そして Gは2004年以降 Mの招聘のもと 訪韓している
昨夜 コンサートの休憩時間に (俺は必死こいて調律していたが)
後輩が このMという 一見 優しそうな女性から 軽い暴力を受けた
そして それでも後輩は 泣きながらも 最後まで忍耐しながら ステージスタッフを勤めた
話が 長くなりそうだが
キチンと釈明しておきたい
Jの友人の フォルテピアノ奏者が (Kという名前にしておこう)
Gに レッスンを受けたいという話があり
それを Gに伝える役目を授かった
しかし 俺は馬鹿のオカゲで リハが延長し
その話を Gに伝える時間がなく 後輩に頼んだ
それを Mが 聞き及んだらしい
そして コンサートの休憩時間
俺は 楽器移動をして 調律している間
後輩は 必死にステージを変更していた
そこにMが来て Kについて 後輩に問いただした
恐らく 敵対しているJの関係者であることを 感知し
面白くなかったのだろう
後輩は 俺のメッセージを Gに伝えただけだから ナニも知らない
しかしながら Mは 後輩に執拗に問いただし
ついには 後輩のホッペを ツネリヒッパリして行ったらしい
何がなんだか分からない後輩は
その痛みと 悔しさと 怒りに 泣きながらも
最後まで ステージマネージを 完璧にこなした
冷たい俺は そんな後輩に対しても
慰めの言葉を ひとつもかけなかったが
コンサート終了後 Mにつめよった
「後輩が泣いてる 謝れ!」
Mは 慌てて後輩に 謝りに来たが
『韓国では 可愛い女子のホッペをツネるのが 愛情表現なんだ』
という嘘を 平然とついて 俺に通訳させた
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オレは こんな思いをするために 韓国まで来たのか?
こんなズルい人間のために 韓国まで来たのか?
コンサートが上手くいくために 韓国まで来たんじゃないのか?
明日は 最後のコンサート
文字通り Gとも Mとも 最後のミッションである
ケーセッキヤ! シーパル!