ミッションC 鍵盤づくし・・・
第一生命ホール
0830 搬入
ホール搬入口に 3台の車と 7名のスタッフが集合する
ホール側の計らいで 少し早めに 楽器搬入が開始される
クラヴィコード スピネット ヴァージナル
1段チェンバロ (フレミッシュ イタリアン)
2段チェンバロ (フレミッシュ2台 ジャーマン)
フォルテピアノ (クリストフォリ ジルバーマン ツンペ ワルター) 計12台
搬入は 楽器本体のみならず
楽器が乗っている ベンチや 椅子 付属品も多々ある
0930 調律
楽器のセッティングが終了
下手にチェンバロ系 上手にフォルテピアノ系
前面には 鍵盤と弦が平行に張られている 3台の楽器
まずは フォルテピアノの調律を開始
そして 終了した者から チェンバロの調律へと移行
ステージ上では 4人の調律師や楽器製作家が 奮闘
武久自身も 小型楽器を 同時に調律し始めた
舞台裏でも まだ休息は 訪れない
速やかな搬出のために 12台の楽器の付属品や カバーを
分かりやすく分類し 様々な準備に追われていた
1030 リハーサル
モダンピアノ(スタインウェイ)もセッティングして リハが始まった
1200 開場 そして 調律
開場の少し前 前半に使用される チェンバロ系の調律が始まった
割振だけは 僅かに時間をズラすものの 4人は一斉に調律
その弦の数 約550本
同時多発調律時 隣あう人と 同じ音になった時
どちらかが 速やかに その音を避け 別の音にワープする
そして 隣が合わせ終わった瞬間 もとの音に戻り 調律が続く
自分達の音を 周囲の響きの中で 模索しながらも
互いに配慮しながら 30分の時間を 全力疾走
1230 開演
大きなモニターには 鍵盤上の 武久の両手が映し出される
鍵盤楽器の歴史の中の 極一部ではあるが
様々な解釈と テクニック ファンタジーが 解説され 演奏される
これだけ 鍵盤の幅や奥行き タッチの重さや深さが 異なる楽器を
瞬時に弾き分け なおかつ 高いクオリティーの音楽を可能にする
その演奏能力は 凄い
1400 休憩40分
後半に使用する ピアノ系の調律が 開始される
最初は 時間をズラしてスタートするも 最後は4人で 一斉に調律
その弦の数 約500本
左の耳には 前後の調律される 楽器の音が飛び込み
右の耳には 会場の聴衆のザワメキが 覆いかぶさってくる
そして ふたつの耳で 自分の楽器の音を懸命に捉える
1440 後半開始
まずは ステージ上の 11台の楽器を順次 同じ曲を演奏
それぞれの受持ち楽器が 演奏される時
それぞれの調律師は それまでになく真剣な面持ち 集中する耳
武久のレクチャーが 続く中 展示用の楽器を搬出
それから ステージ上の楽器の 搬出計画を 打ち合わせる
楽器の位置や 台車の数 ベンチ解体の難易
男女の腕力差を考慮した それぞれの配置
全て 17時までに終了させるための 作戦である
ジルバーマンのピアノで バッハのシャコンヌ
最後の音の 長い余韻をが完全に消え
それに変わって 体温と興奮をはらんだ拍手が沸きあがる
この瞬間が好きだ
1700 撤収完了
過酷なコンディションと 騒音の中での調律だったが 皆 見事だった
撤収も含めて 素晴らしいチームワークだった 皆 見事だった
そして なにより いい演奏だった
3台の車は まだ スタジオや工房に寄り
楽器を搬入しなければ ならない
しかし 汗まみれの体は さわやかだった
夕刻の空は 連日と等しく 雨雲が重たい
さ 雨に降られる前に 楽器を搬入しなければ
満たされた気持ちで アクセルを踏み込んだ