講習会-後世への最大遺物
国立 ムサシ楽器 ヴィオレホール
日本ピアノ調律師協会 関東支部 9班の研究会
ヤマハCFという フルコンのピアノに サウンドベルを
実際に取り付け その効果を 体験できるというもの
スタインウェイでは グランドトレブルベル という名称らしいが
こいつが 高音部の 響板の裏 支柱に取り付けてあって
鉄骨にかかる力を 支柱に伝えているモノなんだが
通常は この部分は 木材の支柱が取り付けてあって
これが 金属だから スタインウェイの音は 素晴らしいのではないか!
などという 安易な憶測も かつては飛び交っていた
今回の研究会では この鋳物のサウンドベルを
中音の低い辺りに 1個
そして 高音の木材の支柱を 切断して 1個 取り付ける
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で まずは ナニもしていない状態のピアノの音を確認しましょう
ということになって 数人の調律師が オモムロに音を出す
タン タン タン タン
調律師は どうして 音を確認するときに
1音1音 フォルテで弾くのか 甚だ疑問である
そんな音は ピアノの演奏では 出てこないではないか
仕方が無いので 杣は アドリブでG-durのアルペジオと 曲を弾く
ピアニッシモが コントロールしにくく ウーム ムムムな状態
立ち上がりも悪く 眠っているピアノという印象
まるでナルシストな音を出して 席に戻ると
日本のチベットと呼ばれている 甲府からやってきた みっちゃん(♂)が
ジャズを弾いてくれた! これは 非常にピアノの音がよく分かる
さて それでは まずは 中音のベルを取り付けてみましょうか
関東支部5班の アントニオ・ナトリが 実演をしてくだすった
(まるでプロレスラーのようなので 勝手にアントニオと命名)
まずは 鉄骨に 穴を開ける
鉄骨からのボルトが 支柱まで伸びるため 次は響板に穴を開ける
ピアノの裏側での作業のため ゴーグルをつけて 果敢にドリリング!
支柱に取り付く サウンドベルと
鉄骨からの ボルトは フタツのジョイントによって
位置の修正が出来るようになっている
で 最後に 音を聞きながら
サウンドベルと ボルトのネジを締めていくのだが
ハッキリ言って これは 明らかに 響きに変化をもたらした!
タン タン タン の音は いっさい無視して 再びミッチャンに弾いてもらう
音の輪郭が鮮明になり ピアニッシモのコントロールが容易になっている!
うーん これは たまげた!
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続いて 高音部の支柱を 1本 ぶったぎる
切断してみて分かったが この木材は ブナだった・・・
いい材料 使ってやがるなー と同時に
アントニオの忍耐強い作業に 脱帽である
もともとあった ボルトの位置の支柱を 完全に切断
これ 張力かかったままでやるんだよね・・・ 最初はビビったさ
でも このボルト外して 支柱切っても 調律は変化無し・・・ へえー すげー
さて 高音部のベルも取り付けて・・・ サウンドチェック
正直な感想としては 高音部の方は 特に大きな変化は感じられない
ミッチャンのピアニッシモも 高音部取り付け前の方が 弾きやすそうだったし・・・
ま 更に 駒圧測定やら いろいろ 盛りだくさんな講習会でした
イッペンに書くと 焦点がボケるので このくらいにしときませう
新たな発見も たくさんもらえて いい刺激になり 有意義な時間を過ごせました
実際に 作業に従事された アントニオ・ナトリ先輩
そして 企画から当日の運営まで 携わった 幹事やスタッフの方々
本当に お疲れさまでした! 感謝です!
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さて この 後付けサウンドベルの考案者は 濱田光久
調律師協会では 知らぬ者は おらぬ程
アクティブで アグレッシブに ピアノの可能性を追求してる方でございました
ございました という過去形を使用しなければならないのが
とても 残念なのですが・・・
実は 今回の講習会も 彼本人が 講師を務める予定だったのですが
この講習会の3日前 杣の誕生日の5月30日に お亡くなりになられたのです
彼の考案された 独立アリコート初め 様々なアイデアは とても刺激的で
今回 お会いしたら たくさんの質問と ツッコミを ぶつけてみたかったのですが
それすら出来ない お別れになってしまいました
でも 調律師の大先輩が 遺して下さった そのベクトルは
我々 後輩達が 引き続き 受け継いでいくことによって
ピアノと 音楽に 貢献できる可能性を 広げていかなければと 改めて思いました
お会いできなくて 本当に残念でした
でも たくさんの宿題を遺してくださったこと 感謝しております
そして 心から 御冥福を お祈り致します
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