狂おしく美しく ①
初めて 調律するピアノ
それは メーカーでも 機種でもなく
ただ 初めて出会うピアノ
遠方から 引っ越してきて 依頼されるピアノだったり
長年 調律をしていなくて 依頼されるピアノだったり
それまでの 調律師が 亡くなられて 依頼されるピアノだったり
初めてのピアノは たいてい 初めて会う お客さん
ぎこちない 緊張感を 短時間で暖めて
挨拶が終わったら ピアノと御対面
鍵盤蓋を開けて まず 音を出す
立ったまま ペダルや タッチのレスポンスも 確認する
最初に弾くのは たいてい Gの分散和音
時々 ごく稀に この狂った状態の ピアノの響きに感動することがある
ピアノという 楽器にではなく
最後にやった 調律師の 技術に感嘆する
天屋根を開けて パネルの内側にある
調律作業カードを取り出してみれば 知らない名前の技術者
最後に調律をやった日から これだけの時間が流れているのに・・・
いい仕事をしている 調律師の後を任されるのは
最初 こんな仕事 自分には出来ない と ややプレッシャーを感じて
でも やがて よっしゃ 頑張らせてもらいます と やや張り切る
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世の中には たくさんの 調律師がいて
有名な人もいれば そうでない人もいて
でも こうして ひっそりと 黙々と 良い仕事を重ねている
調律が狂ってる時 調律師の もうひとつの技術が 露呈される
それは 狂っても 美しい響きがする
それは そのピアノと 十分な信頼関係を築けている証
(続く)
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