狂おしく美しく ③
ソウルで 日本人のフォルテピアノと
韓国のヴァイオリニストが
コンサートをやった時のことだ
ピアノと ヴァイオリンの 音量のバランスがとれなかった
ピアノの音が 大きすぎるので
短い突上げ棒で フタを小さく 開けてみたが 響きが美しくなく
結局 フタを 外してしまった
が 今度は 音が散り過ぎて ピアノの音量が 小さくなってしまう
で 試しに 調律を変えてみた
オクターブを かなり広めにし ユニゾンを かなり膨らませる
そして これだけなのだが 響きのバランスが 見事に整った
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現代のピアノは 弦の特性と 平均律という音律によって
オクターブを広げることによって より美しく響く
しかし チェンバロや フォルテピアノでは
このデフォルメされた調律は 美しくならない
なもんで フォルテピアノへの この調律変更の作戦は
結構 勇気がいる
が ホールの響きなどを考慮した時 なんとかなる と想定できた
ハッキリ言えば このデフォルメ調律は 狂わせているのだ
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重ねた年月に 比例して 技術が向上すればいいのだけれど
なかなか どうして 今でも 大失態を曝している
悔しくて 恥ずかしくて だからこそ この仕事は 楽しい
武久源造の言葉を 拝借すると
演奏という動詞は 英語では 「PLAY」
スポーツや ゲームと同じ 動詞
プレイ というと 「楽しむ」 というイメージが強いが
その楽しさには 愉快さだけでなく 苦しみも 辛さも含まれている
だからこそ 楽しめる領域がある
多くの調律屋にとって 調律するという動詞は 「TUNE」ではなく
プレイ チューニング だと思う
それぞれ 悪戦苦闘して そうやって 音楽へ貢献しようと努めている
いつの日か 演奏中に狂ってきても
美しい響きの調律が できるようになりたい
そのためにも キッチリ 調律していきたい
さ 明日も がんばりますか
(完)
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