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05. 11. 20

ねずみの恩返し ①

重くて長い ドイツの冬


すっかり陽が暮れた頃 アンドレアスは 
仕事を終えて 雪が残る 狭い路地を通り
ようやく 家に帰ってきました

扉を開けようと 冷えきったノブに
手をかけようとした時
1枚の手紙が はさんであることに 気づきました


「アンドレアスさん
申し訳ありませんが 今夜中に
我が家のピアノを 調律して もらえないでしょうか?
お待ち申し上げております・・・トーマス・ハッターマン」

アンドレアスは ちょっぴり思案しましたが
面倒くさそうに 今来た道を 戻り始めました
どこからともなく 夕餉の匂いと 湯気が漂ってきます

ひっそりと静まった アリア教会の脇を抜けて
石畳の 細い坂道を 登りきったところに
トーマスさんの家は 佇んでいました


「こんばんは! 調律に参りました!」
大きな扉が 静寂を濁すように
ギギーっと軋みながら 開くと
暖炉の灯りを背にして 老人が立っていました


口髭まで 見事に真っ白な トーマスおじいさんは
人懐こい笑みを たたえながら
アンドレアスを 優しく 迎え入れてくれました

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