駅前の 路地の突き当たりに 「キッチン・ユタ」はある
これといった 特徴は 無いのだが、、、
店内には いつもピアソラが 流れている
ただ 時々 とても不思議なことが起きる
全く同じ人物が 二人
顔も 服装も 声まで同じ人物が 二人いるのである
それも サラリーマン風な男性の時もあれば
若い女性の時もあり 学生の時もある
様々な 同じ姿のペアが ごく自然に食事をしているのである
タカシは 最初は双子が集う店なのかと思ったが
ある日偶然 その秘密を知ってしまった
それは 店内にある 紫色の椅子に座った時に
自分の腕時計だけが 3時間すすんでしまったのである
そう 紫色の椅子に座った者だけが タイムスリップするのだ
これを知ったタカシは 紫色の椅子で早目の夕食をとり
3時間後に 彼女のヨウコを誘って ユタに来た
そこで タカシとヨウコは 3時間前のタカシに遭遇した
「これって どういうこと?」
「うん なんだか分からないけれど タイムスリップするみたいなんだ」
二人のタカシと ヨウコは 3人で不思議なディナーを楽しんだ
ある日 タカシは 最近目をつけていたアケミを
ユタに誘おうと思い 早目の夕食を食べに来た
アケミには 3時間後に会う約束をしている
そこに ヨウコから携帯に 電話がきた
「今夜は会える?」
「ああ 今まだ会社でさ 今夜は遅くなるから 会えない」
それから しばらくして 駅まで アケミを向かえに行った
ところが 私鉄は 人身事故で ダイヤは大幅に狂っていた
ようやくアケミと会えたのは 3時間以上経ってしまった頃である
「あーお腹ペコペコ! 面白いお店ってどこ?」
「、、、うん 今夜はあんまり 面白くないかも」
それでも 二人は ユタへ向かった
ユタには 当然 3時間前のタカシは 居なかった
ところが 紫色の椅子には ヨウコが座っていたのである
ヨウコは タカシを見つけると席を立ち 近づいてきた
そして タカシと すれ違いざまにささやいた
「会社に ピアソラ かかってる訳ないでしょ 嘘つき!」
ヨウコが 私鉄に投身自殺したことを
タカシが知ったのは 翌朝の 朝刊だった
その時 アケミから電話が入った
「昨日の夜 最高に面白かったよ!」
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今日のオマケ
http://www002.upp.so-net.ne.jp/hit/rei.htm
せっかく 涼しくなったので さらに涼んでいただきませう
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